日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回注目したのは、働くお父さんたちの小遣い事情。
株式会社SBI新生銀行が実施した「2024年会社員のお小遣い調査」によれば、男性会社員の月平均お小遣い額は3万9081円で、前年より1477円減少しました。物価高や生活費の増加が背景にあると考えられ、特に77.8%の男性会社員が何らかの節約術を実施しているといいます。
「最近では、お小遣いの使い方がより計画的になっています。特に30代や40代の働き盛りの世代は、投資や貯蓄を優先し、無駄遣いを避ける傾向が強まっていますね」(生活情報誌編集者)
昨年放送された情報番組によると、バブル期には男性で7万7725円のお小遣いが平均とされていたものの、現在の水準はその半分以下。特に2014年から2024年までの10年間、「4万円の壁」を超えることはほとんどなく、近年は3万円台前半にとどまっているといいます。
「昨年8月5日に放送された『大悟の芸人領収書』(日本テレビ系)では、お笑いトリオ・パンサーの尾形貴弘が“月3万円ですからね!”と自身の小遣い額を告白。自身の散髪代よりも愛犬のトリミング費用のほうが高いことを嘆いていましたが、世のお父さんたちも同じ状況かと思われます」(芸能記者)
株式会社しんげんが運営する主婦向けの情報メディア「SHUFUFU」の調査によると、夫の小遣いの管理は42.9%が妻、22.9%が夫、21.8%が夫婦共同という結果に。また、小遣いの使い道としては、「趣味関連」が29.4%で最も多く、次いで「酒(家以外)」が13.5%でした。
「物価の上昇により、消費者の節約志向は一層強まりました。しかし、それでも趣味や嗜好品には一定の支出を維持する人が多く、限られた予算の中で楽しみを見つける工夫が見られます」(前出・生活情報誌編集者)
ネット上でも小遣い事情は各所で論議されていますが、小遣い制に対してアレルギーを示す人がいる一方で、「毎月3万円のお小遣いをもらい、そのうち5000円を貯金して、妻の誕生日にプレゼントを買っています。不満はありませんね」「お茶は自販機では買わず、スーパーで100円のものを買います。カフェ代も節約し、1日200円ほど浮かせています。でも、スタバだけは譲れません」「美容院代を節約し、自分で髪を切っています。カット技術が向上し、子供の髪も自分が切っています」といった声が聞かれ、「3万円の小遣いでもストレスを感じない」人も少なくないようです。
「会社員の生活様式が変わり、コロナ前のように頻繁に外食や飲み会に出かける機会が減少しました。その結果、お小遣いの使い道も変化し、趣味や自己投資にシフトする人が増えています」(前出の生活情報誌編集者)
また令和には、賢いお金の使い方として投資や節約、キャッシュレス決済の活用が推奨されており、従来のお小遣いの使い方とは異なり、将来の資産形成を意識し、投資信託やNISA、iDeCoといった制度を利用する人も増加。こうした背景もあり、お小遣いを使わずに貯蓄や投資に回すケースが増加しているようです。
「昭和と令和の経済を比較すると、お金の価値観が時代と共に変化していることが分かります。かつては消費や娯楽が中心でしたが、現在は資産形成や節約に重きを置く人が増えており、これは過去の経済危機の教訓を生かし、将来を見据えた行動と言えます」(前同)
令和の金銭感覚は、昭和や平成と比べても一層合理的になり、無駄を省くことが一般的な価値観となっているのかもしれませんが、「過去最高の税収なのに、お小遣いが増えないのは税金が高すぎるからでは?」というのが多くの人の本音でしょう。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。