■赤楚衛二のコミカル演技は新鮮だったが

 また、X上で支持する声は、原作ファンからのものばかり。そこには《漫画は未完で終わったけど、まさかのドラマで先が見れるとは! 新しい形だ! 漫画では晴らせなかった父の無念をドラマで晴らす!》など、原作コミックが掲載誌の休刊によって打ち切りとなったため、オリジナルのラストを期待する声が多い。

 物語前半の赤楚のコミカルな演技は新鮮で、メインの桜田と矢本との呼吸もバッチリ。今までにない赤楚を楽しめた。ただ、終盤、実の父と育ての父の問題がメインになってくると、とたんに赤楚演じる灰江が苦悩する姿が増えた。生真面目なタイプが似合う赤楚の苦悩する姿は、それはそれでハマっているのだがーー。

 この姿で思い出したのが、全話平均視聴率が4.6%と惨敗した、24年4月期の赤楚主演ドラマ『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)。父の汚名をそそぐため、復讐に立ち上がる男の話だったが、キャラ設定が甘く、ライバルの錦戸亮(40)のほうが人気になるという、不名誉な結果に終わってしまった。苦悩するキャラに加え、今回の『相続探偵』終盤にはストーリーにも既視感がある。

 前半は新たな赤楚が楽しめたのに、結局はいつもの赤楚に戻ってしまった感じ。せっかく新境地が好評だったのに、もったいない展開だ。『相続探偵』には原作があるのだから仕方ないのだが、最後までコメディタッチで走りきれば、赤楚はこれまでとは違う評価を手に入れられたかもしれない。

 いよいよ物語は最終章。第9話と最終話では、原作コミックでは描かれずに終わっていた、亡き養父の汚名を晴らすための復讐劇が、結末まで描かれるだろう。ここは割り切って、いつもの苦悩しながら復讐に燃える赤楚を楽しむのが、正しいのかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。