■第1位は、小泉今日子『続・続・最後から二番目の恋』のすごさ
1位 小泉今日子『続・続・最後から二番目の恋』はただのシニア向けドラマではない ヒット作成功例を詰め込んだ“数字を狙いにいった”新・月9路線
小泉今日子(59)と中井貴一(63)がダブル主演する月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系/毎週よる9時)が、4月14日にスタートする。飯島直子(57)らドラマシリーズのレギュラーキャスト10人が再登板するベテランぞろいのドラマだが、ただの懐かしい作品では終わらなさそうだ。
同ドラマは、古都・鎌倉を舞台に、テレビ局プロデューサー・吉野千明(小泉)と、鎌倉市役所で働く公務員・長倉和平(中井)の恋を描いたロマンチック&ホームコメディ。2012年の第1期とスペシャル版、14年の第2期に続く第3期目となり、放送枠を“木曜劇場”から“月9”に移したが、そこにははっきりした狙いがあるようだ。
小泉、中井、飯島、内田有紀(49)、坂口憲二(49)らと、キャストを見ても「懐かしいですね」以外の言葉が出てこないし、主題歌が浜崎あゆみ(46)というのが、その感情に拍車をかける。ここまで目新しさのカケラもないのは、ある意味ですがすがしい。しかし、本作は実は綿密な計算のもとに作られた、数字の取れるドラマなのだ。
第1期は40代の視聴者を狙い撃ちした本作。主要キャスト全員が“実年齢”に合わせて各キャラクターを演じているため、千明が59歳、和平が63歳となり、第3期が狙うのは50代~60代なのは確実。この年代は人口が多いうえ、今の若者と違ってテレビの視聴習慣もあるため、このシニア狙いの戦略は数字を取るための近道なのだ。
たとえば前期の冬ドラマでは、主演の唐沢寿明(61)と鈴木保奈美(58)の33年ぶりの地上波ドラマ共演が話題になった、『プライベートバンカー』(テレビ朝日系)が、やはり中高年の出演者だらけで、内容も金融ものと、50代~60代の視聴者を狙い撃ちしていた。
内容も遺産相続や会社の買収などが展開されたが、大仕掛けなエピソードはさほどなく、いわゆる安心して見られるドラマ。しかし、全話平均視聴率が7.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、けっこう良い数字を取ったのだ。『相棒』や『科捜研の女』シリーズなど、シニア向けドラマはテレビ朝日のお家芸だが、フジテレビももこの路線に乗っかったカタチなのだろう。
メインの2人も、中井貴一が『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)に、小泉今日子が『団地のふたり』(NHK BS)と、出演ドラマが絶好調。また、第1期から脚本を担当している岡田惠和氏の、ほころびを抱えながらも最後に希望を感じさせるドラマの世界観は、週の初めの月曜の緊張をほぐすのにうってつけ。前期や前々期以上に、いろいろな過去や事情を抱えた、アラカンの登場人物にもハマる人が多そうだ。
若者ウケする要素がほとんどなく、本作は高齢化が進む今の日本を象徴するドラマに思えるが、実はこれがいま一番、手堅く数字のとれる、最旬のドラマなのかもしれない。その意味で、放送枠がフジテレビのドラマの看板ともいえる“月9”になったのは、ごく自然の成り行きだと思われる。
これで『最後から二番目の恋』がヒットしたら、中居正広氏(52)の女性問題に端を発した騒動による視聴者離れに揺れているフジテレビは今後、手堅いシニアドラマばかりになるかもしれない。とはいえ、そんな裏事情はいったん忘れて、懐かしい顔ぶれが見られる第1話を楽しみたい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。