■地域愛が深いファンの移住は貴重な文化現象

 そして、最近では「聖地に行くだけでは満足できない」という人たちも登場。ついには、その地に移り住んでしまう「聖地移住」という現象が話題となっています。

「アニメファンが作品の舞台に惹かれて移住する現象は、地域愛が濃厚な形で表れる貴重な“文化現象”です。かつては巡礼で終わっていた関係が、生活の一部にまで浸透するのは、まさに“推し”の持つ影響力の大きさを感じます」(同)

 茨城県大洗町は、『ガールズ&パンツァー』の舞台として聖地化。町全体がファン向けの施策に本腰を入れており、店舗にキャラクターパネルを設置し、スタンプラリーや声優イベントを開催することで町の活性化を図る一方で、住民とファンとの交流がきっかけで「定住者」が増える現象も生まれているそうです。

 また、移住者が増加した静岡県沼津市では、『ラブライブ!サンシャイン!!』のファンが市の職員となり、地元愛と作品愛を両立させたライフスタイルを実現しているとか。昨年2月に自治体主催による『ラブライブ』ファン限定の“聖地移住相談会”が実施されると、予約が殺到するほどの人気を博したといいます。

「移住者のうち、アニメをきっかけに地域に惹かれた人々は、まるで第二の地元に帰るような感覚で来ているケースが多い。観光客とは明らかに違う熱量を持っていて、地域の一員としてしっかり溶け込んでいくのが特徴です」(地方紙社会部記者)

 アニメ×地方創生の最終的な目標は、「収益化と地域ファンの定着」です。作品の放送が終わっても愛され続けるように、継続的なイベント開催や次のコンテンツとコラボできる体制を整えるなど、持続可能な仕組みづくりが鍵を握ります。

 アニメというフィクションの世界から飛び出して、実際の街に“推し”が息づく――巡礼から移住へ、観光から共生へ。アニメの力が地方創生の新たな希望として、本気で求められている時代が到来しています。 

 アニメと地域の縁がこれからどんな形で広がっていくのか、ますます目が離せません。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。