軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■パイロット養成の教官らが操るインドネシアの曲技飛行チーム

 インドネシア空軍は、韓国製の練習機KT-1を6機使用した曲技飛行チーム「ジュピター・アクロバット・チーム」を編成している。公式には頭文字を取りJATと略すが、「ジュピター」と呼ぶのが一般的だ。ちなみにインドネシア空軍には、もう一つF-16 で曲技飛行を行う「エラン・ビル」というチームがあったが、こちらは軍の予算削減を受け、2000年に解散した。

「ジュピター」の拠点はジャワ島のジョクジャカルタ地域にあるアジスチプト国際空港。操縦するのは全員、パイロット教育に当たる教官たちだ。そのため、もともと操縦技術は非常に高い。

パイロットの初等教育用に韓国で開発されたプロペラ練習機KT-1を使用。青空に映えるように機体を紅白とした。タイトな編隊飛行で観客を魅了する。(写真/菊池雅之)

 96 年に結成された当時は、英製のジェット練習機BAEホークMk.53を装備しており、97 年9月23 日に初曲技飛行を実施した。その後、「エラン・ビル」と合体し、「ジュピター・ブルー」と改名。08 年にJATとなり、KT-1へと使用機種を変えた。当初は4機でスタートし、2年間の訓練を経て、10年より本格始動。12年より現在の形となる6機体制となった。国内だけでなく、東南アジア諸国を中心に、海外でもショーを行っている。

KT-1【SPEC】

 
乗員 2名
全長 10.3m
全高 3.7m
全幅 10.6m
最高速度 600km/h
航続距離 約1500km

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。