軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■200以上の目標に対処できるイージスシステム搭載の巡洋艦

 世界初のイージス艦として有名な米海軍の「タイコンデロガ」級巡洋艦は、最強の防空能力を有することで知られているが、その理由は、アメリカが開発した同時多目標を攻撃可能なイージスシステムにある。

 かつて対空ミサイルは、目標に命中するまで誘導し続ける必要があり、1発ずつ射撃していた。だが、敵が複数の場合、そのペースでは間違いなく追いつかない。さらに回転式の索敵レーダーは、数秒間とはいえ、敵に背を向ける時間があり、その瞬間ミサイルを発射されると、初動対処が遅れてしまう。

タイコンデロガ級
かつて世界最強と謳われたタイコンデロガ級であるが、寄る年波には勝てず、続々と引退しており、現在9隻が残るのみ。

 こうしたデメリットを解消したタイコンデロガ級のシステムは、レーダーと一体となった画期的なシステムで、敵機の発見から追尾、攻撃までを自動で行える。最初にミサイルへ目標を指示すれば、常時誘導する必要はなく、目標の直前で最終誘導して命中させる。そのため次々と別の目標へも攻撃できるようになり、理論上は、200以上の敵に対し、同時に対処できるようになっている。

 同巡洋艦は1983年から94年までの間に、27隻が建造され、2000年に入ると弾道ミサイルにも対処できるよう、一部の艦を改造した。

ミサイル巡洋艦CG タイコンデロガ級【SPEC】                      

 
満載排水量    約10,000t
全長 172.5m
全幅 16.7m
喫水 7.5m
速力 30kt
武器 54口径127mm単装速射砲×1 Mk.41VLS×2(61+61セル) ハープーンSSM 4連装発射筒×2 20㎜機関CIWS×2 Mk.32 3連装短魚雷発射管×2
乗員 約350名

 

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。