軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■多事多難を経て進化しつつある防空能力の高い豪版イージス艦
オーストラリア海軍が1965年から配備を開始した「パース」級の3隻は、長い間、同軍の艦隊防空を一手に担っていたが、老朽化に伴い、2000年までにすべて引退させることが決まり、代わりにイージス艦を配備することになった。
そのイージス艦「ホバート」級は、スペイン海軍のイージス艦「アルバロ・デ・バサン」級をベースとしており、艦橋構造物の上に固定式SPYー1Dレーダーを搭載したトップヘビーな見た目が特徴的だ。
1番艦ホバートは2017年に就役した。防空能力が高いだけでなく、対艦・対潜用の武器もバランスよく配置されている。また、3番艦シドニーには、最新の対艦ミサイルNSWを搭載した。
しかしながら、建造から配備までは順風満帆とはいかなかった。ホバートおよび2番艦のブリスベンが配備されると、武器システム等に改良すべき点が多々指摘され、それらを修正すべく、3番艦の建造費が高騰。さらに工期の遅れなども生じ、国会で激しく追及された。今後は3隻すべてのイージスシステムを最新型へとアップデートし、対地攻撃用巡航ミサイル・トマホークも搭載予定だ。

ミサイル駆逐艦DDG ホバート級【SPEC】 |
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満載排水量 | 6,350t |
全長 | 146.7m |
全幅 | 18.6m |
喫水 | 7.2m |
速力 | 28kt |
武器 | 62口径127㎜単装速射砲×1 Mk.41VLS×1(48セル) ハープーンSSM4連装発射筒×2 20㎜機関砲CIWS×1 324mm連装魚雷発射管×2 |
乗員 | 約200名 |
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。SNS:X(@kimatype75)、インスタグラム(masayukikikuchi)