■近年では夕立が“ゲリラ豪雨”に――
――夏の始まりと終わりでは、気温が同じでも環境は違うのでしょうか?
「日差しの強さがだいぶ変わります。紫外線がどうこうではなく、純粋に“日光の強さ”が違いますね。
実は、太陽の高度が一番高く、日差しが強いのは、夏至(※今年は6月21日だった)の時期なんです。それに遅れて気温が上昇して、真夏になる。太陽の強さが落ち始めるころ、7月下旬~8月上旬に最高気温を迎えるんです。
そして、8月が終わる頃の日差しの強さは、4月上旬並みになるんです」(杉江氏、以下同)
――日差しが弱まっている、ということですか?
「お盆を過ぎてくると、日の出が遅くなって、日の入りが早くなりますよね。それは太陽の高度が低くなって、秋に向かっているからなんです。ですので、“太陽の力強さ”で言えば、8月末というのは、真夏の入り口の時期に比べると、やや衰えている時期ではある。そういう意味では、同じ気温・湿度でも、日に当たっているところでは、真夏の最盛期に比べると、若干太陽の厳しさは落ち着いているんです。
もっとも、気温が34、35℃で湿度が高いとなれば、空気の質や暑さはほぼ真夏と変わりません。やはり日中の日差しは強いですから、“昼間の暑さ”に関して言えば、やはり真夏と遜色ありません。朝と夕方は、真夏の最盛期に比べると、幾分か楽にはなりますが」
――8月末の天候について、一部では、ゲリラ雷雨の恐れも言われていましたが……。
「これも“太平洋高気圧に覆われる”というのとリンクする話ですが、湿度が高い状態で、日中に地上付近で気温が上昇すると、それが上昇気流となって、午後になってから積乱雲――かみなり雲が発達しやすくなります。これがいわゆる“夕立”ですが、近年では夕立もゲリラ雷雨扱いされることが多いですね」
――夕立のイメージも、昔と変わったということでしょうか?
「昔と比べて、降り方が強くなっているところがあるので、猛暑になる時イコール、夕方に激しいゲリラ雷雨に注意する必要が出てきますね。
20~30年前までは、夕立は気温が下がるし、“天然の打ち水”とか“夕涼み”といった感じで、良い風物詩でした。それが、都市化や温暖化の影響か気温が上がり、空気中に含まれる水蒸気量の上昇や、海水温度の上昇ゆえか、夕立が生易しいものではなくなってしまった感じはあります。落雷や竜巻のリスクも高くなったし、それで表現が“夕立”から“ゲリラ雷雨”に変わってきている印象を受けますね」
――雷雨と言えば、昨年の8月末は、台風が猛威を振るっていました。今年はどうなるのでしょうか。
「昨年は、暑さがどうこうよりも線状降水帯がどうなるかが注目されていましたね。
今年に関して1つ言えるのは、現時点では台風が近づくような気配がほとんどありません。週末にかけて、台風が列島に影響してくる可能性はほぼ計算されていませんので、より“暑さがどうなるのか?”という要素の方が心配されていますね」
――一般論として、35℃に迫るような気温の日に、注意すべきこと、やってはいけないことを教えてください。
「現在もそうですが、日本は海に囲まれているため、高温多湿。それによって、熱中症警戒アラートが出されるような指標になってしまいます。気温が33℃くらいでも、湿度が高いと、熱中症警戒アラートが出てしまうものですよね。
一般論としては、外での激しい運動は避けることが第一ですし、気温が35℃を超えたら、原則的に運動禁止を呼びかけますよね。
運動に限らず、昼間の熱い時間帯の外出は避けて、涼しい環境の屋内で過ごすように呼びかけます。屋内の方には、適切な冷房使用を、屋外の方には、積極的な水分・塩分補給や適度な休憩などを呼びかけるものですよね」
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『24時間テレビ』を巡っては、市民ランナーとして東京マラソンに出場した経験もある現役医師も強く警鐘を鳴らすなど、熱中症などのリスクを不安視する声は多い。異常な暑さのなか、横山は、無事に駆け抜けられるだろうか――。
杉江勇次(すぎえ・ゆうじ)
1968年千葉県松戸市生まれ。
中央大学理工学部を卒業後、富士通のシステムエンジニアとして3年間勤務。退社後、1996年ウェザーマップ入社。
TBSで、お天気クジラ、おはようクジラ、ニュース1130、ニュースの森など、6年間天気予報を勤めた。2002年から日本テレビで昼の天気予報を担当。朝から夜にかけて、様々な番組で天気予報のほか気象デスクも担当。また、特技のドラム演奏で天気を表現したドラマチック天気予報も行なっていた。