軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■80発の対空ミサイルを搭載可能 世界で最も重装備のイージス艦

 韓国海軍は、防空能力を高めるため、2000年代初頭にイージス艦の導入を決め、まず3隻を建造し、世界で5番目のイージス艦保有国となった。艦名は李氏朝鮮時代の国王「世宗大王(セジョンデワン)」から取られた。以降、同型艦も同時代の人名にちなんでいる。

 引き続きセジョンデワン級の、システムや搭載武器をアップグレードした改造型を3隻建造することが決まり、そのうちの1隻は2024年に就役した。計6隻態勢とする。

ミサイル駆逐艦DDG セジョンデワン級
北朝鮮の弾道ミサイルに対処すべく配備を開始したセジョンデワン級は、大幅にシステムなどを改修し、防空能力だけでなく、対艦・対地攻撃も高めていく。 ※写真/菊池雅之

 ミサイルを発射するためのVLS(垂直武器発射システム)が、前部に48セル、後部に32セルあり、最大で80発ものミサイルを搭載可能。世界標準の対空ミサイルSM−2の他、最新式のSM-6も発射できる。これとは別に対艦ミサイル等を発射するため48セルのVLSもあり、国産巡航ミサイルである「天竜」や対潜ロケット「紅鮫」を撃ち出す。

 それ以外にも、さらに多くの武器を搭載可能。ここまで重装備化したイージス艦を保有するのは韓国のみだ。韓国海軍がイージス艦の導入を決めた背景には、日本が90年代にイージス艦「こんごう」型を4隻配備した影響が大きかった。

         ミサイル駆逐艦DDG セジョンデワン級​【SPEC】            
満載排水量    10,000t
全長 165m
全幅 21.4m
喫水 6m
速力 20kt
武器 62口径5インチ単装速射砲×1 Mk.41VLS×2(48+32セル) 国産VLS×1(48セル) 海星SSM 4連装発射筒×4 Mk.49 21連装近距離対空ミサイル発射機×1 30㎜ゴールキーパーCIWS×1 324mm3連装魚雷発射管×2
乗員 約300名
艦載ヘリ スーパーリンクスMk.99×1

 

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。SNS:X(@kimatype75)、インスタグラム(masayukikikuchi