軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■苦難の末にスペイン海軍独自開発 異色の小型イージス艦に世界驚嘆

 小型のマルチ戦闘艦を指す艦種“フリゲート”。スペイン海軍がフリゲート「アルバロ・デ・バサン」級を完成させるまでには、数々の苦難があった。

 始まりは1980年代初頭。NATO各国で協力してフリゲートを共同開発する計画があったのだが、足並みはそろわず、スペインは90年に同計画から脱退。しかし、フリゲートが必要不可欠であることには変わらず、ドイツ、オランダ、スペインの3か国のみで新たに開発計画を進めることとなった。だが、こちらも頓挫し、最終的に自国だけでフリゲートを建造し、そこへ防空能力の優れたイージスシステムを搭載することになった。かくして2002年9月19日、1番艦「アルバロ・デ・バサン」が就役。そして2012年までの間に5隻が建造された。

 米同様のイージスシステムおよび対空ミサイルSM―2を搭載した本級は、船体が小さいため、艦橋構造物上のフェーズドアレイレーダーが大きく見える。小型イージス艦は建造費が低く抑えられることから、世界で注目を集め、ノルウェーやオーストラリアも本級を原型としたイージス艦を配備することになった。

4番艦「メンデス・ヌーニェス」
本級の特徴は小型のイージス艦であること。写真の4番艦「メンデス・ヌーニェス」は、2025年7月に横須賀へと寄港した。スペイン海軍艦艇(練習帆船除く)の来日は、131年ぶりの快挙となった。 ※写真/菊池雅之

▶就役

F-101 アルバロ・デ・バサン 2002年9月19日
F-102 アルミランテ・ファン・デ・ボルボン 2003年12月3日
F-103 ブラス・デ・レソ 2004年12月16日
F-104 メンデス・ヌーニェス 2006年3月21日
F-105 クリストーバル・コロン 2012年10月23日

【SPEC】                   
満載排水量     4,555t
全長 146m
全幅 18.6m
喫水 4.75m
速力 28kt
武器 4口径127mm単装砲×1 Mk.41VLS×1(48セル) 対艦ミサイル・ハープーン4連装発射筒×2 20㎜単装機銃×2 Mk.32mod.9連装短魚雷発射管×2
乗員 約250名
艦載ヘリ SH-60B×1

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。