軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■多数の航空目標と水上目標を同時処理する大型フリゲート
敵のミサイルや戦闘機から艦隊を守るために防空能力を高めたオランダ海軍のミサイルフリゲート「デ・ゼーヴェン・プロヴィンシエン」級。艦種は中型のマルチ戦闘艦にあたる“フリゲート(中型艦)”ではあるものの、満載排水量は6200tもあり、その上のクラスである“駆逐艦”に匹敵する。2002年から2005年の間に4隻が建造された。
その特徴は、目標の捜索から追尾、射撃指揮までの一連の戦闘行動を完全フォローするAPAR(アパール)多機能レーダーおよびNATO対空戦闘システムを搭載し、アメリカが開発したイージスシステムに匹敵する高い能力を有していること。なお、対空ミサイルはアメリカ製のSM-2を搭載している。
APARとは、Active Phased Array Radarの略で、タレス・ネーデルラント社が開発・製造した純国産レーダーだ。スペック上では、200個の航空目標、150個の水上目標を同時に処理する能力を持つ。なおAPARの探知距離は約150kmと短いため、それを補完すべく、長距離目標用の早期警戒レーダーSMART-Lを艦橋構造物の後方(黒い板状のもの)に搭載している。

●就役
- F-802 デ・ゼーヴェン・プロヴィンシエン 2002年4月26日
F-803 トロンプ 2003年3月14日
F-804 デ・ロイテル 2004年4月22日
F-805 エヴァーツェン 2005年7月10日
【SPEC】 | |
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満載排水量 | 6,200t |
全長 | 144m |
全幅 | 18m |
喫水 | 5m |
速力 | 30kt |
武器 | 54口径127mm単装砲×1 Mk.41VLS×1(40セル) 対艦ミサイル・ハープーン 4連装発射筒×2 ゴールキーパー30㎜CIWS×2 324mm連装短魚雷発射管×2 |
乗員 | 約200名 |
艦載ヘリ | NFH90×1 |
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。