軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■防空能力は米イージス艦に匹敵 苦難の末に配備した英国の象徴
イギリス海軍が独自に建造したミサイル防空艦である45型。1番艦の名前を取り「デアリング級」とも呼ばれる。
また、同型艦すべてが“D”で始まる艦名であることから、通称・D級と略されることもある。
45型は、もともと70年代末にNATO共同で防空フリゲートを建造する計画であったが、より大型の防空艦の配備を目指していたイギリスはコンセプトが合わず脱退。
その後フランス、イタリアとともに「ホライズン計画」として防空艦開発を進め、防空システムPAAMS(パームス)を開発。
しかし90年代に入り、イギリスはこちらも脱退し、独自に計画を進め、ようやく45型の建造に漕ぎつけた。
システムの中核となるのが、マストの上部にある球体の「SAMPSON多機能レーダー」で、これが高速で回転することで、全周囲を常時索敵警戒する。
さらに同レーダーを補完する広域捜索用の3次元レーダー「SMART-L」も搭載。発見した敵戦闘機などの航空目標に対し、長射程の「アスター30」と、射程は短いが機動力の高い「アスター15」で迎撃する。
対艦ミサイルは最新型のノルウェー製へと載せ替える。

●就役
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D32 デアリング 2009年7月23日
D33 ドーントレス 2010年11月3日
D34 ダイヤモンド 2011年5月6日
D35 ドラゴン 2012年4月20日
D36 ディフェンダー 2013年3月21日
D37 ダンカン 2013年9月26日 -
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【SPEC】 満載排水量 7,350t 全長 152.4m 全幅 21.2m 喫水 5.3m 速力 29kt 武器 55口径114mm単装砲×1 シルバーA50VLS×1(48セル) 対艦ミサイル・ハープーン4連装発射筒×2 20mmCIWS×2 乗員 約200名 艦載ヘリ マーリンHM.1他×1
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。