軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■迫る敵から艦隊を守る護衛艦も 現在は戦闘から退いた練習艦に
高度な3次元レーダーを搭載し、対空ミサイルSM-1を主たる武器として戦う「はたかぜ」型。かつては迫り来る敵の戦闘機やミサイルから艦隊を守るミサイル護衛艦だった。
SM-1は艦首にあるMk.13発射機にむき出しでセットされて撃ち出されるという、ダイナミックな方法だった。対艦戦闘も行えるように主砲も装備されたが、こちらは除籍した「たかつき」型護衛艦の5インチ砲を流用した。さらに船体後部は飛行甲板となっており、ヘリの発着艦が可能となっている。
だが、同時多目標対処が可能な最新のシステムおよびミサイルを搭載したイージス艦の配備が開始されると、一気に時代遅れの護衛艦となってしまった。そこで、第一線戦闘任務を離れ、練習艦となることが決まり、2020年3月19日に「はたかぜ」、2021年3月19日に「しまかぜ」が、それぞれ艦種変更した。現在は海上自衛隊の若手幹部育成のための練習艦となった。
Mk.13発射機は残されたが、使われることはなくなった。艦内には教室となる実習員講堂が作られるなど、練習艦らしい改造が施され、航海実習を行うため世界を巡っている。
●就役
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TV-3521しまかぜ 1988年3月23日
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【SPEC】 基準排水量 4,600t(2番艦は4,650t) 全長 150m 全幅 16.4m 喫水 4.8m 速力 30kt 武器 Mk.13mod.4ミサイル発射基 73式54口径5インチ単装砲×1 74式アスロック8連装発射基×1 ハープーンSSM4連装発射筒×2 高性能20㎜機関砲CIWS×2 3連装短魚雷発射管×2 乗員 約260名
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。