軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■防空能力より対艦対潜戦を重視したノルウェー軍のイージス艦

 冷戦以降、21世紀に向けて近代化を目指していたノルウェー海軍は、防空能力強化に乗り出した。

 そこでイギリスなどが開発を進めていた「ホライズン計画」やドイツやオランダが進めるフリゲート共同開発「TFC」への参画も目指したが、最終的に米イージスシステムの導入を決定。

 船体については、スペインが開発・建造したイージスシステム搭載型フリゲート「アルバロ・デ・バサン」級をベースに、スペイン国内で建造されることが決まった。こうして完成したのが、「フリチョフ・ナンセン」級である。

 外観上の特徴は、艦橋構造物上部に載せられた八面体の塔状構造物だ。ここには、「SPY-1Fアンテナ」が前後左右に計4面配置されている。

 一方で、米イージス艦のように艦隊を守る広域防空能力は持たない代わりに、対艦、対潜にも対応できるよう統合されたシステムが開発された。

 そのため、あくまで個艦防御用の対空ミサイルESSMのみしか装備せず、自国で開発した対艦ミサイルのNSWを搭載。

 このミサイルは世界の兵器市場においてかなり評価が高く、米海兵隊は陸上発射型を配備することを決めている。

支援艦艇を表す4桁の艦番号
八面体の塔状構造物が特徴的なフリチョフ・ナンセン級。2番艦「ロアール・アムンセン」は2025年8月、横須賀に寄港し、ノルウェー海軍の初来日となる。4番艦「ヘルゲ・イングスタッド」は2019年に座礁事故を起こし退役した。 ※写真/菊池雅之

就役

  • F-310 フリチョフ・ナンセン 2006年4月5日
    F-311 ロアール・アムンセン 2007年5月21日
    F-312 オットー・スヴェルドルップ 2008年4月30日
    F-314 トール・ヘイエルダール 2011年1月18日

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  • 【SPEC】                  
    基準排水量     4,681t
    全長 132m
    全幅 16.8m
    喫水 4.9m
    速力 26kt
    武器 76mm単装砲×1 Mk.41VLS×1(8セル) 対艦ミサイルNSW 4連装発射筒×4 12.7mm装機銃×4 短魚雷連装発射管×2
    乗員 約120名
    艦載ヘリ​ NFH90×1

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。