軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■防空&対潜能力をそぎ落とした世界で人気の斬新なフリゲート
多種多様な任務に対応できる各種艦艇を自国で建造しているドイツ海軍。ドイツ製の評判は高く、特にフリゲートと呼ばれる中型クラスの軍艦は大人気で、輸出も積極的に行っており、多くの国の主力艦となっている。
冷戦以降、各国が防空能力を強化したさまざまなフリゲートを配備している中、ドイツはあえて防空能力と対潜戦能力を潔くそぎ落とした、独自の戦術に基づく斬新なフリゲートを建造した。それが、「バーデン・ヴェルテンブルグ」級である。
最大のコンセプトは、少数精鋭で運用すること、それでいて2年間、母港に戻ることなく連続して任務を遂行できるようにすること、そして混沌とした現代を戦い抜くために特殊作戦にも対応できるようにすること、以上の3つだ。特に省人力化は大成功を収め、従来のフリゲートよりも100名も少ない人数で運用できる。いざというときに50名を収容できる区画があり、主として対テロ特殊部隊の乗艦スペースだ。また、最大で2機のヘリが搭載可能。
2024年には、長期展開能力を試すため、1番艦が世界一周の航海を行い、その途上、日本にも寄港した。
●就役
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F222 バーデン・ヴェルテンブルグ 2019年6月17日就役
F223 ノルトライン・ヴェストファーレン 2020年6月10日就役
F224 ザクセン・アンハルト 2021年5月17日就役
F225 ラインラント・プファルツ 2022年7月13日就役
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【SPEC】 満載排水量 7,300t 全長 149.5m 全幅 18.5m 喫水 5.0m 速力 26kt 武器 64口径127mm単装砲×1 対艦ミサイル・ハープーン 4連装発射筒×4 27㎜機関砲×2 12.7㎜ RWS×5 12.7㎜機関銃×2 RAM発射機×2 乗員 約120名 艦載ヘリ NFH90×2
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。