軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■20年以上をかけて同型艦を建造 進歩し続けるインド軍の中核艦

 インド海軍は、戦闘機、軍艦、潜水艦と、対する敵とマルチに戦うための軍艦として、タルワー級を配備している。同艦はロシア国境軍が配備するクリヴァグⅢ級をベースとしており、船体にステルス化を加えるなどインド仕様となっている。

 このタルワー級、まず3隻がロシアで建造されたが、その際に大幅な遅延が生じ、怒り心頭のインドが違約金を請求するほどのトラブルに発展した。その後、バッチ2としてロシアに再発注した3隻は、印露共同開発の最新対艦ミサイル「ブラモス」を搭載し、世界を驚かせた。

 ロシア自体も同艦を配備していくが、問題発生。2014年、エンジンを建造していたウクライナとの間に、ロシアによる一方的なクリミア併合に端を発したウクライナ戦争が勃発し、供給がストップ。数隻が未完成となった。そのうちの2隻をインドはバッチ3として購入。ウクライナとエンジンのライセンス契約を結び、インド国内で完成させた。

 現在はバッチ4として新たに2隻の契約をロシアと交わしており、27年には就役する予定である。20年以上をかけて同型艦が建造されていくのは珍しい。

見た目の古さは否めないが、インド海軍の中核艦。アップグレードさせつつ段階的に配備を進め、新たに2隻が戦列に加わる。 ※写真/菊池雅之

就役

  • F-40 タルワー 2003年6月18日就役

    F-43 トリシュル 2003年6月25日就役

    F-44 タバール 2004年4月19日就役

    F-45 テグ 2012年4月27日就役

    F-50タルカシュ 2012年11月9日就役

    F-51トリカンド 2013年6月29日就役

    F-70トゥシル2024年12月9日就役

    F-71タマル 2025年7月1日就役

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【SPEC】                  
満載排水量     4,100t
全長 124.8m
全幅

15.2m

喫水

4.2m

速力 32kt
武器

100㎜単装砲×1 3S90ミサイル単装発射機×1 SSM用8連装VLS×1(4番艦以降ブラモス搭載) 20㎜機関砲CIWS×2 RBU6000対潜ロケット砲×1 533㎜連装魚雷発射管×2 ヘリコプタ―×1

乗員 約180名

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。