軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■ひっそり近づき素早く離脱するヒットエンドラン特化型の軍艦

 スウェーデン海軍は、世界に先駆けて90年代初頭にステルス性能を追求したヴィスヴュー級コルベットの開発をスタート。目的は強大な軍事力を誇るロシアに対抗するためだ。

 しかし、ロシアと正面切って戦うほどの海軍力はない。そこでスウェーデン海軍は、一撃必中の戦術を編み出す。それは、敵艦のレーダーに見つからないように接近し、ミサイルを発射したら速やかに離脱する“ヒットエンドラン戦法”だ。そのためには、高いステルス性と足の速さ、最新ミサイルが必要だった。

 ヴィスヴュー級はまさにその部分にこだわって造られた。特にステルス性能は、レーダーの他、赤外線、磁性、音響、航跡波も隠せるほど能力が高いばかりか、人間の目もごまかせるよう、沿岸部に溶け込ませるべく迷彩色で船体を塗っている。これを通称“フィヨルド迷彩”と呼ぶ。

 船体素材として、炭素繊維強化プラスチックCFRPを採用。また、双胴型の船体内には、ホバークラフトのように空気を注入して浮力を得るサイドウォールホバークラフト型を採用した。対艦ミサイルは国内のサーブ社が開発したRBS-15SSMを8発搭載する。

艦首の70口径57㎜単装速射砲は、射撃しない時は砲身を砲塔内に収納するほどステルス性を重視。5隻とも2040年まで使用する。 ※写真/菊池雅之

就役

  • K-31 ヴィズヴィー 2002年9月19日就役

    K-32 ヘルシンボリ 2009年12月16日就役

    K-33 ノーヘーサンド 2009年12月16日就役

    K-34 ニーショーピン 2015年12月16日就役

    K-35 カールスタッド 2015年12月16日就役

     

【SPEC】                  
満載排水量     650t
全長 72.80m
全幅

10.40m

喫水

2.40m

最大速力 40kt
武器

70口径57㎜単装速射砲×1 RBS-15SSM×8 400㎜魚雷発射管×4 12.7㎜重機関銃×2 7.62mm機関銃×2

乗員 約40名

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。