軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、世界各国の軍隊が実際に使用する兵器・装備を、独自の現地取材写真とともに解説。リアルな“戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■仏軍が開発したアルゼンチンのステルス化を追求した哨戒艦!
アルゼンチン海軍は、広大な排他的経済水域(EEZ)を含む沿岸域の警戒監視用として哨戒艦の配備を決め、仏DCNS社が製造しているOPV(Offshore Patrol Vessel)「ゴーウインド」級を選定した。
これはフランス海軍が配備することを目的として開発された艦種だが、結局採用されなかった。しかしながら、けっして性能が劣っていたわけではない。事実、他国からの問い合わせは多く、最終的にエジプト海軍、マレーシア海軍、そしてアルゼンチン海軍で採用されている。
もともとアルゼンチン海軍は中国の056型コルベットを導入する予定だったが、EEZ内で中国漁船が度重なる不法操業を行っていたため破談に。そこで、本級に注目し、試験艦としてフランス海軍にリースされていた「ラドロワ」を購入。2019年12月に「ブシャール」として引き渡された。以降、フランスで3隻が新造され、アルゼンチン海軍は本級を計4隻配備している。
ステルス化を追求した小型の船体ではあるが、艦橋構造物やレーダーマストが異様に大きいのが特徴。後部甲板には5〜10t程度の重量のヘリであれば発着艦が可能だ。
●就役
-
P-51 ブシャール 2019年12月就役(旧艦名「ラドロワ」)
P-52 ピエドラブエナ 2021年4月13日就役
P-53 アルミランテ・ストルニ 2021年10月13日就役
P-54 コントラールミランテ・バルトロメ・コルデロ 2022年7月11日就役 -
| 【SPEC】 | |
|---|---|
| 満載排水量 | 1,650t |
| 全長 | 87m |
| 全幅 |
13m |
| 喫水 |
3.8m |
| 速力 | 21kt |
| 武器 |
Mk.44ブッシュマスターⅡ30ミリ機関砲×1 |
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。