めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。
――2月8日の衆議院議員選挙(総選挙)は、旧公明党と旧立憲民主党の衆議院議員が新たに結成した中道改革連合が誕生し、高市早苗首相の指導する自民党と全面対決するという構図になりました。なぜこのような現象が起きたのでしょうか。
佐藤:歴史的に日本の政治的変動は国際情勢に連動しています。
現在、国際秩序が劇的に変化しつつあります。これまで自由、民主主義、人権、法の秩序による支配、市場原理などの第二次世界大戦後の普遍的価値観の担い手と見なされていたアメリカが、トランプ大統領の登場以降、露骨に保護主義的傾向を強めるとともに、自国の利益を軍事力によって他国の主権を侵害してでも実現するという帝国主義政策をとるようになりました。
1月初めには、アメリカ軍がベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、アメリカに強制連行しました。軍事力による威圧に怯えたベネズエラは事実上、アメリカの属国になりました。
――トランプ氏の次の目標は何になるでしょうか。
佐藤:グリーンランド併合です。グリーンランドはNATO(北大西洋条約機構)加盟国であるデンマークの領土です。この野望が実現すればNATOは崩壊し、ヨーロッパの安全保障環境が根本から変わります。
――こういった国際秩序の変動が日本の内政に影響しているのですね。
佐藤:その通りです。高市早苗首相は、日本の国家機能を強化することが重要と考えています。
そのために防衛力を飛躍的に増強し、スパイ防止法により国内統制を強化しようとしています。高市氏の積極財政政策は、急速な防衛力増強と親和性の高い政策です。
他方、中道改革連合は、国家機能の強化は、社会を強化しなくては不可能だと考えています。中国やロシアなど近隣諸国との緊張を激化させる急激な防衛力強化には慎重で、スパイ防止法に関しても、慎重に対応すべきと考えています。
自民党の経済政策は新自由主義的です。対して中道改革連合は、新自由主義で金融に偏重した資本主義を是正し、生産を重視した国民経済を形成しようとしています。
国家、社会のいずれに力点を置くことが日本国家と日本国民にとって有益なのかが、自民党と中道改革連合の目には見えにくいが、真実の争点なのです。
佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。