めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

――2月8日に投開票が行われた第51回衆議院議員総選挙で、自民党が地滑り的勝利をおさめたことによって日本の政治は変わりますか?

佐藤:変わると思います、今回の総選挙は、事実上、日本初の大統領選挙でした。1月19日、高市早苗首相は、「国民の皆様、私は本日、内閣総理大臣として、1月23日に衆議院を解散する決断をいたしました。なぜ今なのか。高市早苗が内閣総理大臣でよいのかどうか。今、主権者たる国民の皆様に決めていただく。それしかない。そのように考えたからでございます」と述べました。自民党の選挙公約も明確でありませんでした。にもかかわらず、国民は高市早苗氏という個人に対して白紙委任状を与えるという選択をしたのです。

 

――高市氏は「国論を二分する政策に挑戦する」という決意を繰り返していますが、具体的にどのような政策を指しているのでしょうか?

佐藤:私が見るところ、現時点で国論を二分する政策などというものは、存在しません。高市氏が、国論を二分するような問題をこれから作っていくのだと思います。そして、その二分法(ダイコトミー)にあたっては、高市氏が勝つような分節化を行います。高市氏は、政治を数の力で進めていくことになるでしょう。しかし、国民の多数派はそれを強引と考えないと思います。

 例えば、スパイ防止法についてです。「スパイを断固取り締まるべきだ」と「それには及ばない」という二分法で問題を設定します。

 

――国民の大多数は「スパイなどという悪い奴は断固取り締まるべきだ」と考えるのでしょう。

佐藤:その通りです。だからスパイ防止法が制定されることになります。日本国旗毀損罪の導入についても、「外国国旗毀損罪が規定されているにもかかわらず、日本国旗は守られていない現状を是認する」と「そうでない」という二分法を設定した場合、国民の大多数が「そうでない」という選択をすることになるでしょう。こういう国論を二分する政策に関し、国民の意志を問うごとに、高市氏の権力基盤が強化されるというゲームがこれから進んでいくのです。

 

――胴元が必ず勝つようなからくりになっている賭場が開帳されるということですね。

佐藤:その通りです。この博打で高市氏に挑む人は100%負けます。

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。