めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。
――トランプ米大統領は3月6日、米国とイスラエルが攻撃を仕掛けたイランに対し、無条件降伏を主張しました。
(トランプ氏は)「無条件降伏以外にディール(合意)はあり得ない」と主張した。自身のSNSに投稿した。激しい軍事作戦を展開するなか、イランを降伏させて、意のままになる政権にすげ替えたいとの意欲をあからさまに示した。
(中略)トランプ氏が言及した「無条件降伏」の意味について、報道陣に問われたレビット大統領報道官は6日、「(イランに対する作戦名)『壮大な怒り』の目標が完全に達成されれば、イラン側が何と言おうが本質的には、イランは無条件降伏の状態に置かれる」と述べた (3月7日『朝日新聞』デジタル版)
イランは無条件降伏するのでしょうか。
佐藤:トランプ氏が述べていることは、無理筋です。無条件降伏とは、文字通り、条件を一切付けずに降伏しろということです。これはもはや、取り引き(ディール)ではなく最後通牒です。イランのイスラム革命政権を瓦解させるまで、トランプ氏はこの攻撃を続けるつもりです。その背後には、合理的計算を超えた、「サタン(悪魔)とは戦い、勝利しなくてはならない」という超越的な信念があるように思えてなりません。
――今後、事態はどのように推移していくのでしょうか。
佐藤:私は外交官時代から30年近く家族ぐるみで付き合っている元モサド幹部と、3月8日(日)午後6時半頃(日本時間/イスラエル時間同日午前11時半)、通信アプリで意見交換しました。
元幹部は、「確実に言えるのは、イランの軍事力に壊滅的な打撃を与えたことだ。イランの軍事力の90~95%が破壊された。しかし、イランのイスラム主義体制の転覆を目的とするならば、地上軍を派遣しない限り不可能だ」と述べていました。
ただし、今後の予測はきわめて困難だという見方をしていました。具体的には、「インテリジェンス分析に関して、馴染まない2人のプレイヤーがいる。1つ目はイランの民衆だ。2つ目がトランプだ。トランプの心の動きは、30分で180度変わることがある。こういう常軌を逸した人物の心の動きをインテリジェンスの技法によってつかむことは不可能だからだ」と言っていました。
元モサド幹部が指摘するように、イラン情勢にとっての最大の不安定要因はトランプ米大統領です。
佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。