めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。
――3月19日昼(日本時間20日未明)にワシントンのホワイトハウスで行われた高市早苗首相とトランプ米大統領の会談をどう評価しますか?
佐藤:外交技法とインテリジェンスの観点からすると、今回の日米首脳会談は、満点と言ってもいいくらいよいできです。
イラン危機に関して、高市氏は、日本にとって最も重要なのがエネルギーを安定的に確保することであるという認識を示しました。日本の外務省や経産省には、日本はイランと特別な関係があるので、それを尊重し、アメリカとイランの仲介をすべきだという考えをする人がいます。こういう人たちは、2月28日のイスラエルとアメリカの空爆後、イラン政府の統治能力が著しく低下し、ホルムズ海峡封鎖を唯一のカードとする瀬戸際外交以外の選択肢をモジタバ・ハメネイ新最高指導者らのグループが持たなくなっているという現実が見えていません。
アメリカは2019年に、イラン革命防衛隊をテロ組織と認定しています。アメリカがテロ組織と認定する団体と、日本が橋渡しをすることは不可能です。
――ホルムズ海峡への自衛隊艦船派遣についての高市首相の対応についてはどう考えますか?
佐藤:3月20日、日米首脳会談後の会見で、「艦船の派遣についてはどうだったのか」(3月20日、首相官邸HP)という記者の質問に対して、高市首相はこう答えました。
「機微なやり取りではございますけれども、やはりホルムズ海峡の安全確保ということは非常に重要だということでございました。ただ、日本の法律の範囲内で、できることと、できないことがございますので、これについては詳細にきっちりと説明をいたしました」(前同)。
ホルムズ海峡の安全確保の重要性を強調することで高市氏は、今後、トランプ氏からホルムズ海峡への自衛隊の艦船派遣の要求があった場合、日本としては基本的にその要請を前向きに受け止めるという方向性を示しました。
重要なのは、高市氏がトランプ氏の要請に対し「できることを行う」と前向きに答えたことです。これでトランプ氏は高市氏を味方と認識しました。実際にトランプ氏から艦艇派遣要請があった場合、高市氏は「わかった。両国の専門家で具体的に詰めて行う」と答えればいいと思います。日米防衛当局間で協議すれば、おのずから日本ができる範囲に事柄は収まります。
佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。