めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。
――4月2日から、政府の意思決定を支えるインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化に向け、「国家情報会議」と、実務を担う「国家情報局」を新設するための関連法案の審議が衆議院で始まりました。両機関が新設さると国民のプライバシーが侵害されるのでしょうか?
佐藤:そんなことはありません。もっとも殺人、強盗、放火、窃盗などの一般犯罪の捜査にあたっても、プライバシーの侵害との観点で問題が生じる場合があります。税務調査などの行政活動でもプライバシー侵害が起きることもあります。インテリジェンス活動においてプライバシーの侵害が発生したならば、その都度解決していけばいいと思います。
――日本のインテリジェンスは諸外国と比べて弱いのでしょうか。
佐藤:そんなことはありません。日本のインテリジェンスは世界でもトップクラスです。特に内閣情報調査局(内調)はとても優秀です。インテリジェンスにおいて最も重要なのは、政策意思決定者に正確な分析に基づいた近未来予測を伝えることです。過去、数年の事例に関しても、22年2月のロシアのウクライナ侵攻、23年7月のガザ紛争、イスラエルとアメリカによる25年6月、さらに今年2月28日から現在まで続く本格的なイラン攻撃に関しても近未来予測を外したことはありません。インテリジェンスが優秀だから、内閣総理大臣は正確な外交政策を選択することができるのです。高市首相とトランプ米大統領の首脳会談に関しても、内調が事前に詳細な調査を行ない、その結果が活かされました。
さらに内調は、CIA(米中央情報局)、SIS(英秘密情報部)、BND(独連邦情報局)、モサド(イスラエル諜報特務局)などの同盟国・友好国の情報機関だけでなく、SVR(ロシア対外情報庁)とも良好な関係を維持しています。だから、日本は現在もLNG(液化天然ガス)の10%弱をロシアから購入し続けることができているのです。
また、インテリジェンスには常に人の要素があります。原和也内閣情報官は、警察庁出身ですが、語学に堪能で、モスクワとワシントンの日本大使館に勤務したという異例の経歴を持ちます。国際的なインテリジェンス・コミュニティーにおける原氏の人脈と能力に対する評価も高いです。内閣情報官を国家情報局長に昇格させ、国家安全保障局長と同格にするのも正しい機構改革です。
佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。