めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

――ナフサ不足に関する報道を最近よく目にします。

佐藤:ナフサは、ガソリンに似た透明な液体で、石油製品のひとつです。LPガス留分の次に沸点(35℃~180℃)が低く軽い留分です。ナフサからプラスチック、合成繊維、合成ゴム、合成洗剤などが作られます。

 医療関係では、カテーテル、手袋などナフサを不可欠とする石油化学製品がとても多いです。特に医師たちが心配しているのは「ダイアライザー」(人工腎臓)の不足です。「ダイアライザー」は使い捨てで、透析は週3回行う必要があります。ある大学病院教授は、「プランBを考える必要がある。透析の回数を週2回に減らし、『ダイアライザー』を節約することだ。しかし、それでも不足ということになるとわれわれに打つ手がなくなる」と言っていました。透析が止まると、患者は数週間から2カ月程度で死にます。

 

――そうなると深刻な事態になりますね。

佐藤:そうです。日本でナフサ不足が解消しても東南アジア諸国でナフサ不足が続けば、医療用手袋のようにそのかなりの部分をこれら諸国から輸入している医療関係製品が目詰まりを起こしかねません。

 

――コロナ禍の初期に起きたマスク不足のような事態が生じかねませんね。

佐藤:そうです。従って、ゼロサムゲームの状態にならない国からナフサを購入する必要があります。

 

――具体的にそのような国がありますか。

佐藤:あります。ロシアです。

  韓国産業通商省は(3月)30日、民間企業がロシア産ナフサ(粗製ガソリン)2.7万トンを輸入すると明らかにした。同日中に韓国に到着する。中東情勢の緊迫で石油化学製品の原料となるナフサの供給が不足し、新たな輸入先の確保に動いた(3月31日『日本経済新聞』電子版」)

 日本も至急、ナフサをロシアから買い付ける態勢を構築することを提案します。その場合に重要になるのがクレムリン(ロシア大統領府)の政治判断です。鈴木宗男参議院議員(自民党)は、クレムリンと独自の人脈を持っています。鈴木氏がモスクワを訪問して、クレムリン高官に「ロシアから日本がナフサを購入することは、ウクライナ紛争後の日ロ関係正常化をにらんだ上でも戦略的意味がある」と伝達すれば、ロシアは高度な政治判断に基づいて、日本に大量のナフサを売却する可能性があると私は見ています。

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。