軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■配備から30年近くたってもなお世界で活躍する両国の潜水艦!

 “世界で最も静かな潜水艦”と呼ばれるロシアの「キロ」級と“世界で優れた耳”を持つと呼ばれる日本の「おやしお」型。その完成度の高さから世界を驚かせたベテラン潜水艦だ。ともに初配備から30年近くたつものの、両艦は通常動力型の潜水艦の最高傑作との呼び声が高い。

 キロ級は1984年頃から配備が開始された。騒音源となるエンジンを浮台の上に置き、吸振ゴムやサスペンションを挟んだ。ロシア海軍では20隻を配備したが、性能の高さから中国やインド、イランなどへも輸出され、計59隻が建造されたベストセラー潜水艦だ。これは日本にとっては非常に厄介な存在であり、極東・太平洋エリアで活動するキロ級を探しだすのは、なかなか難しい。

キロ級(ロシア・約400億円)※写真/菊池雅之

 80年代の海自潜水艦の静粛性はそれほど高くなく、それでいて探知能力や機動力も今一つだった。そこで、これを改善すべく、船体の形状を変更する根本からの見直しを図り、90年代、おやしお型が誕生した。

おやしお型(日本・約500億円)※写真/菊池雅之

 これまでの潜水艦は、船体を上から見た際、艦首部分が膨らんだ涙滴型としていたが、これを葉巻型としたことによって機動性が増した。さらに最新式のソナーの導入により、潜水艦探知能力が飛躍的に向上した。

 こうして牽制し合った両潜水艦であるが、歴史的な出来事が起こる。2002年に海上自衛隊は創設50周年を記念して、初の国際観艦式を開催した。そこになんとキロ級の「モゴーチャ」が参加したのだ。

 この平和的な出来事は世界を驚かせたが、残念ながらこれ以降、関係は悪化の一途をたどる。そして両潜水艦は、寄る年波に勝てず、続々と引退している。

●SPEC比較 キロ級 vs おやしお型

潜水艦  キロ級(ロシア) おやしお型(日本)
基準排水量 約2,300t 2,750t
水中排水量 約4,000t 4,000t
全長 約75.0m 82.0m
全幅   8.9m
吃水   7.4m
最大速力 水上:約12ノット
水中:約20ノット
水上:12ノット
水中:20ノット
兵装 533mm魚雷発射管×6 HU-606 533mm魚雷発射管×6
(89式魚雷/ハープーン)
乗員 50名 70名

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。