めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。
――5月3~5日、鈴木宗男参議院議員(自民党)がモスクワを訪問しました。ロシア側の反応はどうでしたか?
佐藤:とても好意的でした。4日、鈴木氏はニコノフ国家院(下院)国際問題委員会第一副委員長、カラーシン連邦院議員(上院、元外務次官)、ルデンコ外務次官(日本担当)らと、5日にヤコヴレフ漁業庁副長官、ガルージン外務次官(ウクライナ、中央アジア担当)らと会談しました。
ルデンコ氏は鈴木氏に対して、日本が望むならばロシアは外相会談に応じると述べました。もちろんルデンコ氏の発言はプーチン大統領の了承を得たうえで行われたものです。
ヤコヴレフ氏との会談では具体的な成果もありました。
(5月)11時(日本時間17時)からヤコブレフ漁業庁副長官と会い、日ロ地先沖合漁業交渉の再開をお願いした。
ヤコブレフ副長官から5月20日過ぎから交渉に入りたいとの具体的日程が示され、何よりの答えであり、後はしっかりまとめるべく日本側交渉者の腕にかかっている(5月5日、鈴木宗男氏ブログ)。
日ロの外務省ルートでは一向に関係が改善しないので、クレムリン(ロシア大統領府)が鈴木氏を通じて対日関係改善の意志を伝えてきたのです。
――日本政府としてはどう対応したらよいのでしょうか。
佐藤:ルデンコ氏からの“ロシアは外相会談に応じる用意がある”というシグナルに対して、茂木敏充外相は前向きに答えるべきです。もはや対ロ政策についてG7共通の立場は存在しません。G7の協調などというのは、虚構の上に立った議論に過ぎません。外交はリアリズムで行うべきです。
アメリカのトランプ大統領は、25年8月にプーチン大統領をアラスカに招きました。現時点で日本がロシアと外相会談を行っても、アメリカが反発することはありません。日本にとって唯一の同盟国であるアメリカとの関係を毀損することがないのですから、日本政府はロシアとの対話回復に躊躇する理由はないはずです。
ウクライナ問題で日ロの立場が対立しても、対話は可能です。鈴木氏は、「ロシアと日本は隣国で、引っ越すことはできない。相手の論理を理解し、妥協点を模索し、とにかくロシアとの戦争を避けることが私に与えられた使命と思っている」と、よく私に述べます。その通りと思います。
佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。