軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■戦場の足は装軌式から装輪式へ 対決は火力も装備もロシアが上
世界中の軍隊において、装輪(タイヤ)式装甲車は“戦場での足”として必要不可欠な存在だ。整地された道路であれば、従来の装軌(キャタピラ)式装甲車よりも素早く、そして悪路であっても装軌式装甲車と遜色なく走れる走破性を持つ。
陸上自衛隊は1996年に96式装輪装甲車を配備した。長らく装軌式の装甲車を配備してきた陸自にとって初の装輪化ということになる。
車長(射手兼務)と操縦手の2名で運用し、後部キャビンには、1個分隊に当たる8名の普通科隊員が搭乗可能。車上には12・7mm重機関銃M2、または96式40mm自動てき弾銃が装備される。下車する際は車両後部にある扉がランプ(傾斜路)になり、乗降の負担を軽減する。普通科(歩兵)の他、機甲科(戦車)や特科(野砲)、施設科(工兵)など、さまざまな職種に配備されている。
一方、ロシアでは1959年に装輪装甲車を採用。それがBTR-60で、同系統の最新式がBTR-82だ。2013年からロシア軍への配備が開始され、陸軍、海軍、空挺軍、国境警備隊にて約1500両が運用されている。車長、射手、操縦手の3名で運用し、後部キャビンには7名の兵士が搭乗可能。車上には14・5mm機関銃を装備。改修型からは30mm機関砲も装備可能とし、かなりの打撃力アップを図った。さらに地雷の衝撃を軽減するため、全座席に衝撃吸収マウントが備え付けられて、自動消火システムもある。
こうした装備は96式装輪装甲車にはなく、被弾、または地雷攻撃による耐性は明らかにBTR-82のほうが高い。常に戦闘を意識したロシアのほうが一歩先を行っている。
●SPEC比較 96式装輪装甲車 vs BTR-82
| 装甲車 | 96式装輪装甲車(日本) | BTR-82(ロシア) |
|---|---|---|
| 全長 | 6.84m | 7.7m |
| 全幅 | 2.48m | 2.95m |
| 全高 | 1.85m | 2.7m |
| 重量 | 14.5t | 15t |
| 最高速度 | 100km/h | 100km/h |
| 武装 | 12.7mm重機関銃M2 または96式40mm自動てき弾 |
KPVT 14.5mm機関銃(BTR-82) または2A72 30mm機関 |
| 乗員 | 2名+8名 | 3名+7名 |
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。