軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■北の「海上ミサイル発射基地」とそれを迎撃できる韓国の駆逐艦!

 北朝鮮海軍が配備した最新鋭の駆逐艦「チェ・ヒョン」。抗日独立運動の英雄の名前に因んで命名された同艦は、2025年4月25日に進水式を行い、その模様は世界に向け大々的に配信された。さらに2026年3月3、4日、金正恩総書記が乗艦し、戦略巡航ミサイルの発射試験を視察。世界を驚かせた。

チェ・ヒョン級(北朝鮮・価格非公表)※写真/朝鮮中央通信

 基準排水量は約5000t、全長は約140mと、北朝鮮海軍史上最大級。注目すべきは、ただの駆逐艦ではなく、前述したように巡航ミサイルや弾道ミサイルを発射できる能力を持つ点にある。つまり北朝鮮海軍は、海上ミサイル発射基地を手に入れたのも同然ということだ。

 引き続き2番艦「カン・ゴン」が建造され、2025年5月に進水式が行われたが、なんと船台から海へと降ろされる際に横転、船体の半分以上が海に沈む大事故が発生した。現地にいた金正恩は「我が国の尊厳と自尊心を一瞬にして崩壊させた」と激怒。その後、造船所を代えて復旧、3番艦の建造も始まった模様だ。

 対する韓国海軍は、韓国国産駆逐艦建造計画「KDX」の一環として、1998年に「クワンゲトデワン」が就役。KDXIIIにはイージスシステムを搭載し、2008年12月に「セジョンデワン」として就役させる。同型艦は3隻建造され、改修型である「バッチ2」も3隻建造することを決定。韓国海軍は6隻ものイージス駆逐艦を配備することになる。

セジョンデワン級(韓国・300億円)※写真/菊池雅之

 対「チェ・ヒョン」級を想定した場合、「セションデワン」は現在、搭載する対空ミサイルSM-2MRでは対処できないが、弾道ミサイルや巡航ミサイルを撃ち落とすことができる最新のSM-6を今後搭載する。

●SPEC比較 セジョンデワン級 vs チェ・ヒョン級

駆逐艦  セジョンデワン級(韓国) チェ・ヒョン級(北朝鮮)
基準排水量

7600 t(バッチ1)
8200 t(バッチ2)

5000t
全長 170.0m 約140m
全幅 21.4m 約16m
喫水 6m 不明
速力 30kt 4名
速度 70km/h(整地) 不明
武装 62口径5インチ単装砲×1
Mk.41VLS(SM-2用)×2(48+32セル)
国産VLS(巡航ミサイル用等)×1(48セル)
VLS×3(前部1+後部2)
海星対艦ミサイル4連装発射機×4
ゴールキーパー30mmCIWS×1
324mm3連装短魚雷発射管×2(本数不明
130mm砲×1
AK-230×2
VLS×3(前部1+後部2)
対艦ミサイル4連装発
射機×4
CIWS×1
533mm魚雷(本数不明
乗員 約300名 不明

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。