めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。
──沖縄県名護市の辺野古沖で3月16日に小型船2隻が転覆し、研修旅行の平和学習で訪れていた同志社国際高校(京都府)の生徒ら2人が死亡した事故に関して、5月22日、文部科学省が同志社国際高の教育内容が政治的中立性を定めた教育基本法第14条に違反すると認定しました。この件についてどう考えますか。
佐藤:この問題は3つの位相に腑分けして考える必要があります。
第1は、法的位相の問題です。死傷者が発生する船舶転覆事故が起きたのですから、国交省が刑事告発するのは当然です。検察は、被疑者死亡という理由で不起訴にすることになります。
(死亡した高校生の乗っていた)「平和丸」について、沖縄総合事務局によると、刑事事件への影響が懸念されるとして、同船船長は聞き取りに応じていない(5月24日『琉球新報』電子版)
ということです。船長が任意の事情聴取に応じないならば、捜査当局は罪証隠滅のおそれがあるという理由で強制捜査に乗り出し、船長を逮捕する可能性があります。
これに対し、政治弾圧だという批判が出ると思いますが、私はそういう見解に与しません。死傷者を伴う事故が起きたのだから、相応の責任を取ってもらうのは当然です。自らが絶対に正しいことをしていると信じているならば、何をやっても許されるということがあってはなりません。
──わかります。第2、第3の位相は何を意味しますか。
佐藤:第2は、教育的位相です。論点は、政治的中立性を判断する主体が国家であるか、社会(≒国民)であるかです。まず、当事者である同志社国際高校、学校法人同志社が、今回の事故の経緯をどう総括し、政治的中立性が担保されていたか否かを明らかにし、再発防止措置についての具体的方針を示すべきです。その内容に深刻な問題がある場合に限り、文科省が介入すべきです。政治的中立性を第一義的に判断するのが国家だということになれば、教育現場が萎縮するのは必然的成り行きです。
第3は、沖縄の米軍専用施設過重負担という位相の問題です。日本の陸地面積の0.6%を占めるに過ぎない沖縄県に、米軍専用施設の70%が所在するという不平等な状態が存在していることから目を背けてはなりません。
これら3つの位相を区別した上で、ていねいに議論する必要があります。
佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。