めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

──中国の習近平国家主席が6月8・9日、7年ぶりに北朝鮮を国賓として訪問しました。どこに注目していますか?

佐藤:習近平氏は、8日に金正恩朝鮮労働党総書記と会談しました。両国の発表に朝鮮半島の非核化という言葉がありません。中国は事実上、朝鮮半島の非核化という主張を降ろしていいます。この点は北朝鮮にとって大きな成果です。

 また、8日の首脳会談の内容について、北朝鮮側はこう報じました。

  会談では、国際および地域問題に対する意見交換が行われ、複雑多端な世界政治情勢の中で朝中両党、両国間の戦略的調整と協力を強化し、両国の主権と安全、発展利益を固守し、地域と世界の平和と発展を共同で守る問題が議論され、満足な見解の一致が遂げられた(6月9日『朝鮮中央通信』日本語版)

 ここで言う地域問題とは、朝鮮半島情勢のことと解されます。また、「戦略的」とは、第三国との関係を含んでいるという意味です。具体的には、アメリカを念頭に置いています。朝鮮半島では、停戦が成立していますが、国際法的には依然として戦争状態が続いています。朝鮮停戦協定に署名しているのは、北朝鮮、アメリカ(国連軍の代表という立場で)、中国の三国です。

 

──韓国はこの協定に加わっていないのですか?

佐藤:加わっていません。当時の李承晩韓国大統領が署名を拒否しました。朝鮮戦争を国際法的に終結させることができれば、米朝国交正常化に向けた動きが出てきます。中国は、朝鮮停戦協定を平和協定に変え、北朝鮮とアメリカの関係正常化に寄与することを考えているのかもしれません。

 

──そういえば、中朝首脳会談前に韓国紙に興味深い報道がありました。

  青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)はこの日、「政府は朝中間の交流が韓半島の平和と安定に寄与する方向で行われることを希望し、中国が韓半島問題に関連して建設的役割をしていくことを期待する」とし「我々は韓半島問題に関して中国側と外交チャンネルを通じて緊密に意思疎通をしている」という立場を表した(6月6日『中央日報』日本語版)

 

佐藤:朝鮮戦争の法的終結に向けた動きが近未来に出てくることを踏まえ、朝鮮休戦協定の当事国でない韓国に対して、中国が事前の根回しを始めているのかもしれません。水面下で何かが動いているような気がします。

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。