めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

──ウクライナとポーランドの関係が険悪になっています。原因は何ですか?

佐藤:ウクライナのゼレンスキー大統領が第二次世界大戦中にナチス・ドイツと協力してユダヤ人、ポーランド人、スロヴァキア人、チェコ人、ハンガリー人などの大量虐殺に加担したウクライナ蜂起軍(UPA)を肯定的に評価したからです。ゼレンスキー氏は5月26日に発した大統領令で、ソ連の侵攻に対して「模範的に任務を遂行した」として、特殊作戦軍の部隊の一つに「UPAの英雄たち」という称号を与えました。

 ゼレンスキー氏の決定に対して、ポーランドが激しく反発しました。

  ポーランドのナブロツキ大統領は(6月)19日夜、隣国ウクライナのゼレンスキー大統領に授与していた最高位の「白鷲勲章」を剥奪すると発表した。ポーランドは主要なウクライナ支援国の一つで、両国の関係が悪化することになれば、欧州の安全保障全体にも影響を与える可能性がある(6月20日『朝日新聞』デジタル版)

 

──ゼレンスキー氏は勲章剥奪の決定にどう対応しましたか?

佐藤:外交的とは思えない激しい反発を示しました。

  (6月20日)ゼレンスキー氏はソーシャルメディアで、「われわれは、2023年に授与された白鷲勲章はウクライナ国民とわが国の軍隊に向けられたものだと信じていた。当時もそう説明されていた。本日、私はこの勲章をポーランド大統領に送り返す」と述べ、ポーランドの大統領府宛てに通常の郵便局から発送するために梱包されている勲章の写真を投稿した(6月21日『AFP=時事』)

 

──ロシアによるウクライナへの侵攻が始まった2022年以降、ポーランドはウクライナの避難民を受け入れ、手厚く支援しています。現在も150万人以上のウクライナ人がポーランドで暮らしています。ゼレンスキー氏がこんな対応をするのは、ウクライナにとってマイナスではないでしょうか?

佐藤:私もそう考えます。しかし、ゼレンスキー氏の論理は異なります。6月25、26日にポーランド北部ダダンスク市で開催された「ウクライナ復興会議」にゼレンスキー氏は欠席し、スピリデンコ首相が代表団を率いました。現在のゼレンスキー氏にとって、軍事的、経済的支援よりも、ナチスと協力したUPAを肯定的に評価することの方が自らの権力基盤の維持に適うと考えているようです。

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。