軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■米本土まで狙える「ICBM」を2段階の防空体制で迎え撃つ!

 北朝鮮は90年代から手を休めることなく弾道ミサイルの開発を続けている。たびたび発射試験を行い、その多くが日本列島を飛び越えた先に落下。その都度、日本政府は「Jアラート(全国瞬時警報システム)」を発出し、国民に警戒を促している。

 今から9年前の2017年7月4日、午前9時39分。北朝鮮は北西部の平安北道(ピョンアンプクト)の亀城(クソン)から日本海に向けて、弾道ミサイル「火星14」を発射した。同ミサイルは、約40分間、約930km飛行し、日本の排他的経済水域内に着水。これが初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験の成功となり、北朝鮮は米本土まで狙えるICBMを手に入れ、さらにミサイル開発に本腰を入れていくことになった。この火星14はいわば初期型で、徐々にアップグレード。最新版は射程1万5000kmに到達すると予想される「火星20」だ。

火星14(北朝鮮・価格不明)※写真/朝鮮中央通信

 こうした弾道ミサイルを迎撃できる最終手段が、航空自衛隊が配備するパトリオットミサイル「PAC-3MSE」だ。これはミサイルの誘導方式“Phased array Tracking Radar to Intercept on Target“の頭文字をとって「PATRIOT(愛国者の意)」と読ませるニックネーム。本来の名称は「MIM-104」だ。

PAC-3MSE(日本・1発約5億円)※写真/菊池雅之

 これまでのPAC-3よりも迎撃高度や守備範囲がおおむね2倍となったMSE型は、百発百中とまではいかないものの迎撃できる確率は上がった。ただ、複数を同時に撃ち込まれたときの対応には限界がある。そこで、その前段階で海上自衛隊がイージス艦から迎撃し、その撃ち漏らしをPAC-3MSEが迎撃する2段階防空体制を整えている。

●SPEC比較 PAC-3MSE vs 火星14

ミサイル PAC-3MSE(日本) 火星14(北朝鮮)
全長 約5m 19.5m
直径 約0.3m 1.7m
射程 約35km 6700~10000km(推定)
迎撃高度 約15km  

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。