めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。
──アメリカとイランの間で戦闘が再開されました。
米国とイランの攻撃の応酬が相次ぐなか、米中央軍は(7月)11日、イランがホルムズ海峡を通過していた民間船を攻撃したとして、イランを再び攻撃したと発表した(7月12日『朝日新聞デジタル』)
このような事態を予測していましたか?
佐藤:予測していました。6月17日に署名された停戦覚書について私は、歴史的には1939年の独ソ不可侵条約、1941年の日ソ中立条約に似ていると分析していました。いずれの当事国も「この合意が遵守されることはないだろう」と思っていますが、当面の利益のために締結したに過ぎないからです。
──トランプ米大統領は何を考えているのでしょうか。
佐藤:私はトランプ氏が、イランの核開発を武力を用いてでも阻止することが神から与えられた使命であると確信しているとみています。他方、イランも核兵器を保有し、イスラム国家の保全を万全にすることが神から与えられた使命と考えているのでしょう。
──軍事的合理性だけで考えれば、米軍と戦ってもイスラム革命防衛隊は敗北するだけです。
佐藤:しかし、イランは強気の姿勢を崩していません。イラン国営放送が運営するウェブサイト『ParsToday』によると、イラン・イスラム革命防衛隊のゾルファガーリー報道官(中佐)が、次のように述べています。
IRIB通信によりますと、ハータムアンビヤー中央司令部のエブラーヒーム・ゾルファガーリー報道官は「再三にわたるホルモズ海峡管理へのアメリカの干渉と悪行は、地域の安全保障、国際貿易、石油タンカーや商船の航行を深刻に脅かしている。誠に遺憾ながら、一部の地域諸国による加担により、地域全体への戦争拡大のリスクが高まっている」と述べています。
また「我々は以前の警告通り、米国によるホルモズ海峡管理への干渉を一切容認せず、今後も容認しない」としました(7月14日『ParsToday』日本語版)
日本国内の報道だけを見ていると、ホルムズ海峡をめぐる危機を過小評価しかねません。この問題について、日本には事態を左右する力はありません。だからこそ、その現実を十分認識したうえで、トランプ米大統領の方針を支持する姿勢を示しつつ、イランとも正面から対立しない巧みな外交を展開する必要があります。
佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。