軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■核攻撃が可能な北の老潜水艦とそれを迎え撃つ韓国の駆逐艦!

 北朝鮮が1976年から1995年の間に配備した26隻もの「ロメオ」級潜水艦は、もともとソ連で開発された通常動力型潜水艦だ。中国が同級をおよそ80隻も建造し、そのうちの2隻が北朝鮮へと輸出された後、北朝鮮国内でも生産された。なお1985年に事故で1隻が沈んでいる。安価なこともあり、シリア海軍やエジプト海軍も配備している。

ロメオ級(北朝鮮・価格不明)※写真/朝鮮中央通信

 同艦は長きにわたり秘密のベールに包まれていたが2014年、金正恩総書記が乗艦する様子を朝鮮中央通信が報道。まだ北朝鮮海軍の主力潜水艦であることが明るみに出た。

 そして2023年、世界にさらなる衝撃が走る。ロメオ級に垂直発射型のミサイル発射管を10個装備し、そこから核ミサイルを発射できる「戦術核攻撃潜水艦」へと改造したというのだ。

 同年9月6日に、「金君玉英雄艦」と命名され、進水したと発表された。その名は、朝鮮戦争時に米重巡洋艦「ボルチモア」を撃沈した北朝鮮海軍指揮官「金君玉」にちなんでいるという。かなりの老体の潜水艦ではあるが、海中発射基地として核ミサイルを撃つだけであれば、まだまだ第一線で使用可能だ。 

 既存のロメオ級を含め、そこまで航続距離は長くはない。そこで、朝鮮半島を出る前に叩ける存在の一つが韓国海軍の中核として6隻も建造された駆逐艦「忠武公李舜臣(チュンムゴン・イースンシン)」級だ。汎用軍艦であるが、国産の最新鋭魚雷「K745青鮫」を搭載できる。

忠武公李舜臣級(韓国・約580億円)※写真/菊池雅之

 ロメオ級は音も大きいため、最新の対潜情報処理システムを持つ同級であれば発見も容易で、かつ攻撃までもシームレスに対応できる。

●SPEC比較 ロメオ級 vs 忠武公李舜臣級

潜水艦 ロメオ級(北朝鮮)
水中排水量 1,830t(金君玉英雄艦は不明)
全長 76.6m
全幅 6.7m
最大速力 13ノット
兵装 魚雷発射管×8
VLS×10(金君玉英雄艦のみ)
乗員 約50名
駆逐艦 忠武公李舜臣級(韓国)
満載排水量 5500t
全長 154.4m
全幅 16.9m
喫水 4.3m
最大速力 29ノット
兵装 62口径5インチ単装砲×1
Mk.41VLS 32セル(対空ミサイル用)
K-VLS 24セル(青鮫等)
海星-1対艦ミサイル4連装発射機×2
324mm3連装短魚雷発射管×2ほか
乗員 320名

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。