軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■時速90kmで航行可能な工作船を絶対に逃がさない不審船キラー

 北朝鮮は対南工作および祖国統一事業として、韓国へと工作員を送り、スパイ行為を行っている。その輸送手段の一つとして開発されたのが、高速半潜水艇SP-10だ。

SP-10(北朝鮮・価格不明)※写真/菊池雅之

 見た目はボートのようだが、艇内のタンクに水を注入することにより、操縦室部分だけを残し、船体のほとんどが海中に潜る。よって、レーダーはもとより、目視でも発見は難しい。だが、エンジン音を消し去ることはできないため、上陸地点の500m手前で、工作員は船を飛び出し、泳いで上陸地点を目指す。

 SP-10は何度か韓国に発見されており、撃沈された船体もある。それを回収したところ、船内には日本製のレーダーや無線機などが搭載されていた。なお、SP-10があまりにも優れているため、韓国軍は同じものを作り、真似をして特殊部隊輸送用に使用している。

 日本人拉致事件に代表されるように、日本も北朝鮮の工作船による被害を受けてきた。日本まで直接半潜水艇で乗りつけることはできないが、これまで確認されてきた大型の漁船などを模した工作船を母艦として運用される可能性はゼロではない。

 浮上時は50ノット(時速90km)と高速航行が可能なSP-10を追いかけられるのは、海上自衛隊では「はやぶさ」型ミサイル艇しかない。

はやぶさ型(日本・約90~100億円)※写真/菊池雅之

 同艇は、もともと1999年に発生した能登半島沖不審船事件を受けて速力を引き上げるなどしたため、“不審船キラー”とも呼ばれている。

 もし、SP-10が日本近海に迫ったとしても44ノットで追跡し、主砲である76mm砲や12.7mm重機関銃の攻撃で確実に拿捕できるのは間違いない。

●SPEC比較 SP-10 vs はやぶさ型

高速半潜水艇 SP-10(北朝鮮)
排水量 11t
全長 12m
全幅 3m
全高 1.5m
喫水 70cm
速力 水上50kt、水中6kt
武装 なし
乗員 8名
ミサイル艇 はやぶさ型(日本)
基準排水量 200t
全長 50.1m
全幅 8.4m
深さ 4.2m
喫水 1.7m
速力 44kt
武器 90式SSM連装発射筒×2
62口径76mm単装速射砲×1
12.7mm重機関銃×2
乗員 21名

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。