軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■AIPを採用した日中の潜水艦 動力互角も機動力で日本が優位

 中国は、通常動力(ディーゼルエンジン)型潜水艦を複数、国内建造しているが、2006年に配備を開始した「元級(039A型〜039B型)」は、中国で初めてAIP(非大気依存推進)を採用した、特筆すべき潜水艦だ。

元級(中国・価格不明)※写真/統合幕僚幹部

 潜水艦はディーゼルエンジンを回す際、どうしても吸排気が必要となるため、海面近くまで浮上するシュノーケル航走をする必要があった。そこで元級では、加熱と冷却を繰り返してシリンダー内の気体の体積を変化させることでピストンを上下させてエンジンを動かすスターリングエンジンを中国で初めて採用。これにより“潜りっぱなし”が可能に。これにより本来、海中で身を隠して戦う潜水艦にとって、敵に発見される状況をみすみす作っていたシュノーケル航走を回避することができる。

 2011年8月5日、沖縄本島近くを航行中の元級を初めて海自がとらえ、哨戒機「P-3C」で追跡、その存在が明るみに。以降、たびたび日本近海で目撃されるようになった。

 一方の日本もスターリングエンジンを搭載したAIP潜水艦「そうりゅう」型を開発し、2009年3月から配備を開始。開発時期を考えると日中はほぼ同時にAIPプロジェクトをスタートさせたことになる。

そうりゅう型(日本・約600億円)※写真/菊池雅之

 サイズは「そうりゅう」型のほうが大きいが、魚雷発射管の数は6門と同じで、探知能力もほぼ同等クラスと推察される。決定的な違いは、「そうりゅう」型が「X舵」を採用している点だ。これにより海中での旋回性能が高くなり、4枚中3枚の舵が故障しても動くことができる。元級は既存の「十字舵」であり、機動力は「そうりゅう」型に勝負あり。

●SPEC比較 そうりゅう型 vs 元級(039A型潜水艦)

潜水艦 そうりゅう型(日本) 元級(039A型潜水艦)(中国)
基準排水量 2900t 2000t
水中排水量 4200t 2400t
全長 84.0m 72.0m
全幅 9.1m
吃水 8.5m
最大速力(水上) 13ノット 16ノット
最大速力(水中) 20ノット 約23ノット
兵装 HU-606 533mm魚雷発射管×6 533mm魚雷発射管×6
乗員 65名 58名

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。