めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

──先の国会で再審の制度が変わったそうですが、どこが変わったのでしょうか?

佐藤:再審とは、いったん有罪判決が確定した事件について、「この裁判は間違っていた可能性がある」として、もう一度裁判をやり直す制度です。先の国会では、冤罪、つまり罪を犯していない人が有罪にされてしまった場合に、これまでより救済しやすくするため刑事訴訟法が改正されました。
重要なのは、裁判所が検察官に対して、再審に関係する証拠を提出するよう命じる仕組みが整えられたことです。また、裁判所が再審を始めると決めた場合に、検察官が異議を申し立てることも制限されました。

 

──それなら、再審をしやすくするのは良いことではありませんか?

佐藤:基本的には良いことです。ただし、新しい問題が生まれる危険もあります。私はそれを「再審請負ビジネス」と呼んでいます。再審が認められる可能性がとても低いのに、弁護士が本人や家族に「新しい制度なら裁判をやり直せる」などと期待させ、長い間、弁護士費用を受け取り続けるようなケースです。

「検察の捜査がおかしかった」と主張するだけでは、裁判の結果は覆りません。有罪の根拠になった証拠を一つ一つ検討し、判決を覆せる材料があるかを冷静に判断する必要があります。

 

──では、そうした問題を防ぐにはどうすればよいのでしょうか?

佐藤:弁護士が本人と家族に、本当の見通しをきちんと説明することです。「再審が認められる可能性は低い」「これだけのお金と時間がかかる」という不利な情報も伝えなくてはいけません。必要なら、別の弁護士にも意見を聞くべきでしょう。

 再審は冤罪に苦しむ人を救うための大切な制度です。だからこそ、人の「無罪になりたい」という切実な願いを利用してお金を稼ぐ仕組みにしてはいけないのです。

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。