軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。
■工作員を運ぶ北の特殊潜水艇と対峙する韓国の陸軍特殊部隊!
北朝鮮が保有する潜水艦(艇)の中に、工作員を隠密裏に運ぶ特殊潜水艇がある。その一つがサンオ級である。サンオとは、サメのことで、米軍が名づけた。
これは完全なる北朝鮮国産の潜水艇で、40隻程度保有していると見られる。艦首には2〜4門の魚雷発射管があり、533mm魚雷を発射可能。ただし、魚雷を置くスペースを工作員の搭乗スペースとしており、発射能力はなく、海中での工作員の居住区画として使用している。
1996年9月13日未明。工作員26名を乗せた1隻のサンオ級特殊潜水艇が、深度約150mを航行し、15日20時、韓国カンヌン市内の海岸沖に到達。3名の工作員が泳いでカンヌン市内へ潜入。17日21時頃、任務を終えた3名の工作員を回収するため、再び海岸線へと近づこうとした際に、なんと座礁してしまった。そこで工作員は潜水艇を捨て、韓国に上陸。通りかかったタクシーの運転手が潜水艇を発見し、通報したことから、韓国軍側は最終的に約150万人も兵士を投入し、49日間にも及ぶ工作員捜索を行うことになった。
その中核となったのが韓国陸軍特殊部隊「特殊戦司令部」、通称“特戦司(トクチョンサ)”だ。これは1958年4月1日に新編された部隊で、隊員が皆、黒いベレー帽をかぶっているのが特徴。空挺降下、海中侵入、ゲリラ戦など各種特殊作戦を得意とする。ベトナム戦争に派遣されたこともあり、総員は1万人以上とも言われる。
後に「カンヌン浸透事件」と命名されたこの事件は、逮捕者1名、射殺13名、自決11名、行方不明1名という結果で幕を閉じた。
●SPEC比較 特殊潜水艦「サンオ」級 vs 特殊戦司令部
| 特殊潜水艦 | 「サンオ」級(北朝鮮) |
|---|---|
| 水中排水量 | 277t |
| 全長 | 35.5m |
| 全幅 | 3.8m |
| 全高 | 3.7m |
| 速力 | 8.8ノット |
| 乗員 | 30名(最大) |
| 特殊戦司令部 | 特戦司(韓国) |
|---|---|
| 総員 | 約1万人 |
| 編成 |
第1空輸特戦旅団 |
菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。