軍事フォトジャーナリスト・菊池雅之が、台湾有事をはじめ、迫り来る極東の脅威と日本、アメリカ、台湾の戦力を徹底比較。独自の現地取材写真とともに解説した“リアルな戦場のテクノロジー”を読み解くコラム。

■一度日本に後れを取った中国がロシア艦を参考に続々と開発!

 現在、世界の海軍で艦隊の中核となっているのは、基準排水量5000tクラスのマルチに戦える駆逐艦。この流れは特に冷戦末期から顕著となっている。それにならい、中国海軍は80年代末に、初の大型駆逐艦の建造を計画。こうして93年に就役したのが052A型駆逐艦「ハルビン」だ。ロシアの駆逐艦を参考にしつつ、西側のいいところを取り入れた独自コンセプト艦となり、同型艦も1隻建造された。

052A型(中国・価格不明)※写真/菊池雅之

 海上自衛隊は創設時から駆逐艦を主力艦としており、冷戦終結後、初となるマルチ駆逐艦「むらさめ」型を建造した。こちらをベースとしてさらに改良を加えたのが、2003年に就役した「たかなみ」型だ。

たかなみ型(日本・約600億円)※写真/菊池雅之

 主砲を76mm単装速射砲から127mm単装速射砲へと大型化しただけでなく、艦首と艦中央部に分散していたミサイル垂直発射機VLSを集約し、艦首に32セル(1セルに1発ずつ収容)設置した。

 一方の052A型は、主砲には中国海軍としては標準の100mm砲を搭載するも、VLSは装備しておらず、就役から5年もたたずして一世代古い駆逐艦となってしまった。

 そこで中国は、独自駆逐艦建造を一度諦め、ロシアから「ソヴレメンヌイ」級駆逐艦の購入を急遽決定。計4隻を配備した。その間も052A型をプラットフォームにして新しい駆逐艦を研究開発していき、結果的にその後、続々と国産駆逐艦を建造。日本に後れを取ったものの、現在の配備数は日本を上回った。

 建造から20年近くたった「たかなみ」型であるが、最近になりチリ海軍が購入を希望し、日本政府と協議を始めたと話題となった。

●SPEC比較 たかなみ型 vs 052A型

駆逐艦 たかなみ型(日本) 052A型(中国)
基準排水量 4,650t 4,800t
全長 151m 148m
全幅 17.4m 16m
喫水 5.3m 7.5m
速力 30kt 31kt
主武装

54口径127mm単装砲×1
90式SSM4連装発射筒×2
Mk.41VLS×32セル(対空及び対潜ミサイル用)
高性能20mm機関砲CIWS×2
3連装短魚雷発射管×2
哨戒ヘリ×2

100mm連装砲×2
730型30mm連装砲CIWS×2
HHQ7対空ミサイル用8連装発射機×1
YJ8対艦ミサイル連装発射筒×4
87式6連装252mm対潜ロケット砲×2
3連装短魚雷発射管×2
哨戒ヘリ×2
乗員 175名 266名

菊池雅之(きくち・まさゆき)
軍事フォトジャーナリスト。講談社フライデー契約カメラマンを経てフリーに。陸海空自衛隊に加え、世界中の軍隊を取材。著書『ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典』(双葉社)、『自衛隊だけが日本を救える』(光人新社)他多数。