めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

──参政党の神谷宗幣代表がドイツの「ドイツのための選択肢」(AfD)のティノ・クルパラ共同党首と会談しました。どう見ますか?

佐藤:注目すべきなのは、これが一度限りの会談ではないことです。両氏は前年8月にも日本で会っており、今回は移民、エネルギー、経済、外交などについて約2時間半協議しました。定期交流に発展するなら、単なる友好行事ではなく政党外交になります。

 参政党とAfDには、既成政党が十分にすくい上げていないと感じる人々の不満を、政治的な物語に組み立てるという共通点があります。ただし、支持者の不安を理解することと、外国人などへの根拠のない非難を認めることは別問題です。政治を見るときには、事実と感情の双方を確認する必要があります。

参政党の神谷宗幣代表 ※画像/産経ビジュアル

──AfDは特に旧東ドイツ地域で強いですね。

佐藤:2025年の連邦議会選挙では、AfDの第2票得票率がザクセン州で37.3%、テューリンゲン州で38.6%でした。その背景を単に「右傾化」と片づけると実態を見失います。統一後の失業や人口流出だけでなく、旧東独で築いた職業経験や社会的評価が、西側の基準によって低く評価されたという感覚もあります。

 東ドイツにはかつてドイツ国家民主党(NDPD)が存在し、旧ナチ党員や旧国防軍関係者を社会主義国家に統合する役割を担いました。ただし、現在のAfDをNDPDの後継と見るのは誤りです。重要なのは、政治文化には政権交代より長い時間軸があるということです。

 

──今後の交流では何を見るべきでしょうか?

佐藤:エネルギーと対ロ政策です。AfDはロシア制裁の解除やノルドストリームの修復、米軍の長距離兵器のドイツ配備への反対を掲げています。参政党もエネルギー政策を重視していますが、同じ「エネルギー」という言葉を使っても、安全保障環境は異なります。

 今回の会談で、参政党がAfDの対ロ政策に同意したという事実は確認できません。だからこそ、今後はロシア、ウクライナ、米軍兵器の配備について、何を共有し、どこで立場が異なるのかを見る必要があります。

 インテリジェンスでは、相手を悪魔化しても情報は増えません。政党の言葉を具体的な政策に照らして確認することが重要です。

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。