今年、結成40周年を迎えた「たけし軍団」。師匠であるビートたけしと歩んだ破天荒な道のりは、今なお芸能史に燦然と輝く。
 前号に続き、ガダルカナル・タカ(66)、つまみ枝豆(64)、ダンカン(64)の三者に、コンプライアンスなど“どこ吹く風”な昭和テレビの舞台裏を聞いた――。

   

■軍団メンバーの体当たりが名物企画を支えた

――たけしさんが総合司会を務めた人気番組『スーパージョッキー』(日本テレビ系)。芸人の体当たり企画「THEガンバルマン」、お色気企画「熱湯コマーシャル」など、番組の名物企画を支えてきたのが軍団メンバーでした。

枝豆 「熱湯コマーシャル」は言わばマイルド版。実はその前に軍団だけがやる「熱湯チャレンジ」というコーナーがあったんですよ。これは本当の熱湯で、言わば“プロ仕様”(笑)。お湯は熱いわ、唐辛子が入っているわで散々でした。

タカ 収録はじめの湯船の温度は、50℃を確実に超えていましたからね。

枝豆 それほどの熱湯だと、体に力が入らないんですよ。足が踏ん張らないから、みんな上半身を使って、なんとか湯船から這い出して。

――熱湯経験者しか分からないことですね。一番つらかった体当たり企画は?

タカ 木のバットを叩き折るようなチャレンジ企画は、結果を出さないと終わらないのでキツかったです。たけしさんは本気で折ろうとしなかったり、オーバーリアクションで誤魔化すのが、本当に嫌いなんで。

枝豆 タカ坊が氷柱割りに挑戦するコーナーがあって、中途半端にできないから、覚悟を決めて思いっきり頭突きしたんですよ。すると、タカ坊の鼻から謎の液体がドバッと出てきて、軍団のみんなが「脳しょうが出たぞ! 隠せ!」ってカメラに映らないようにしたり。

ダンカン あと、岐阜の“長良川の鵜飼い”をモチーフに、たけしさんが鵜匠になって、軍団がウレタン製の鵜の着ぐるみを装着して、海に入るっていうコーナーもキツかったな。

枝豆 ウレタンが水をどんどん吸い込んで重くなって、みんな溺れちゃってね。

タカ そんな我々を見て、たけしさんは「お前ら、今日はリアクションがいいな!」って、さらに棒で水中に押しこむんですよ。こっちは、死ぬ思いでって必死に泳いでいるのに(笑)。

――当時の番組は、ケガが絶えなかったのでは?

ダンカン 軍団のモットーは、「ケガをする/しない」ではなく、「ウケるか/ウケないか」でしたから、ケガは気にしていなかった。

枝豆 ケガなんてしょっちゅうだし、収録中はいつも隠していたよね?

ダンカン そうだね。番組の収録後に、「腕の骨折ったの?」って聞かれても、「折った折った! でも、ウケた!」。それで終わり。

■命がけのクイズ番組

――『スーパージョッキー』と同時期に放送されたのが、バラエティ特番『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日テレ系)。芸人たちが命がけのクイズに挑戦した名物番組でした。

 中でも、クイズで間違えると吊り下げられたバスごと海に沈められる「バス吊り下げアップダウンクイズ」は衝撃的でした。

タカ あれは熱海の海で、当日は大しけで、漁協の人が「知らねえぞ」って言う中の強行撮影でしたからね。

ダンカン 荒波の海に、ボロボロのバスごと沈められたんですよ。ダチョウ倶楽部の上島竜兵なんて、「俺、泳げないんですよ!」って絶叫していたけど、みんな知らんぷり。

タカ でも、そんな下手すりゃ死ぬ状況で、ダンカンは、最後までバスの車内に残ってリアクションし続けたから大したもんだよ。

ダンカン 俺は作家として番組の企画会議にも参加していたから、可能な限り、おもしろくしようと思っていたんですよ。万が一、心肺停止になっても、助けてくれるだろうって(笑)。

――同じく、ダンカンさんが命がけで挑んだ、クイズに不正解すると真っ逆さまにビルの屋上から落とされる「逆バンジージャンプ」も印象的です。

ダンカン あれは、さすがの俺も「こんな危ないの誰がやるの?」って思ってましたね。そしたら案の定、どの事務所も断ってきて出演者が見つからない。

 すると、プロデューサーのテリー伊藤さんや20名のスタッフがじっと俺を見つめるわけです。その瞬間に、「俺ね!」って(笑)。

枝豆 実は、ダンカンは高所恐怖症なんです。飛行機に乗ったときも機体が揺れたら、乗務員さんを呼びつけて「どうせ墜落するんだろ? 分かってんだよ!」って騒ぎだすくらい。それなのによく飛んだよな!

ダンカン しかも、飛び降りた先は水面じゃなくて、コンクリですからね。生きた心地がしませんでしたよ。

タカ そのときのクイズ問題が「現存する最も大きい両生類は何?」だった。答えは「オオサンショウウオ」なんだけど、ダンカンは涙目になりながら「カルーセル麻紀!」って答えて、真っ逆さまに落ちていった。あれは伝説のボケです(笑)。

――たけしさんも、ボケを貫いたダンカンさんを抱きしめてくれていましたね。

枝豆 飛び降り企画は怖いし、芸人だって本当はやりたくないんだよね。

タカ でも、みんないざとなると腹をくくる。(井手)らっきょだって、スカイダイビングで地上に着く間に、みんなの視界に入ったわずかな時間で、ちゃんとパンツを脱いでましたからね。

ダンカン しかも、自分の母親と奥さん娘さんも現場に呼んでいて、家族が涙目でほっとした瞬間に、目の前にらっきょのチンコが現れるんですから(笑)。

タカ ただ、親ってのはありがたいもんですよ。母親はスッと、らっきょの股間を隠すんですから。

枝豆 それはありがたいのか?(笑)。

タカ その光景を見て、ポール牧師匠が「芸人ってすばらしい」って涙を流したんですから。

(つづく)

 

たけし軍団40周年プロジェクト
舞台『ウスバカゲロウな男たち』

脚本・演出:広瀬 格
【出演】ガダルカナル・タカ/つまみ枝豆/松尾伴内/ダンカン/ラッシャー板前/グレート義太夫/井手らっきょ/柳憂怜
【場所】シアターサンモール
(東京都新宿区新宿1-19-10サンモールクレストB1)

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