■マルイもポップアップ出店を加速化で競争激化か

 ポップアップストア事業に乗り出そうという商業施設は、何もPARCOに限らない。商業施設『マルイ』を運営する丸井グループは、マルイへのリアル店舗の出店相談から契約までをオンラインで行なえる出店サービス『OMEMIE(おめみえ)』を22年にスタート。24年3月には「ポップアップイベント出店が​はじめての方におすすめ」と題した資料をオンライン上で公開するなど、マルイへのポップアップ出店を加速化させようとしている印象がある。

「マルイは比較的立地の良い場所にあるので、ビジネスとしては合っていますね。ただ、マルイとしてもそこで稼ぐというよりは、新規顧客をつかむためという考えでしょう」(前出の渡辺氏)

新宿マルイ本館B1にはさまざまなポップアップショップが ※撮影/編集部

 だが、マルイやPARCOを筆頭に百貨店の催事場からコンセプトカフェに至るまで、“ひとつのハコの中でいろんな店が展開される”という業態はますます増える一方。「難しい立ち位置の商業施設も少なくないのでは」と、渡辺氏は指摘する。

「究極的に言えば、売り上げというのは客数×客単価でしかないわけですが、人口が減少の一途をたどるなかで商業施設側も客数を増やすというのは至難の業。だから、今、求められているのは“施設へと来るファンをつくる・増やす”ということ。そのためには、やはり多くのファンを抱えるポップアップストアの商業施設への出店というような顧客との接点作りは重要になってくると思います」(前同)

 コロナ渦が明け、一時的に減少したポップアップストアは再び増加の傾向にある。このままいけば“ポップアップストア戦争”も勃発しそうだが、はたして――。

渡辺広明
1967年生まれ、浜松市出身。 東洋大学法学部経営法学科卒業。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長・スーパーバイザーを経て約16年間バイヤーを経験。日用品を中心に、さまざまなメーカーと約780品目の商品開発に携わる。
顧問、講演、メディア出演等幅広い活動を行っており、現在フジテレビ『LiveNews α』レギュラーコメンテーター。Tokyofm 『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ、YouTube 『やらまいかビジニュース』。著書に『コンビニが日本から消えたなら』(ベストセラーズ)、『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版、馬渕磨理子との共著)等。