■花江がいなければ寅子の支持は――
場面場面で寅子と花江は、それぞれの違う立場が対称的に描かれていて、それは、まるでコインの裏表のよう。表面上だけ見れば、花江がただの古い女。せいぜい、寅子のツラいときに寄り添ってあげる親友的ポジションに思えるが、それだけではない。
本作は、現代にもつながる女性問題に大胆に切り込み、これまでの朝ドラにない展開を見せてきた。恋愛はせず、育児に奮闘することもないという、画期的なヒロインだが、すべての視聴者がスムーズに受け入れられているのだろうか? 寅子の女性像にとまどっている人もいるだろう。
寅子が女性が虐げられていることに怒っているとき、花江は寅子と真逆の穏やかな振る舞いを見せる。今まで通りの朝ドラらしい、妻や母としての振る舞いを見せることで、寅子をより際立たせ、説得力を与えている。花江という存在がなければ、寅子はここまで受け入れられたか、実は微妙なのではないか。
そんな花江も6月7日放送の第49回で、ホーナーは祖父母がユダヤ人で、亡命して米国にやって来ており、戦争で大勢の親戚が犠牲になったことを知ると、少し柔らかい表情を浮かべ、彼を受け入れたように見えた。寅子とともに花江も変わり始めている。本作の準主役ともいえる最重要人物を演じる森田に注目していきたい。(ドラマライター/ヤマカワ)