■土屋太鳳と井桁弘恵が伏線か

 キャスティングも絶妙だが、小説『猫弁』シリーズの大山淳子氏の脚本、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)を手掛けた中江和仁氏の演出など、作りも極めて丁寧。また、症状の説明、治療の過程を丁寧に描写していて、中村が出しゃばりすぎず、寄り添うようにフォローしながら患者が立ち直っていく姿は感動的だ。

 さらに、医者と患者の1対1の治療が続くとパターン化しそうだが、第2話では、精神保健福祉士・岩国真紀(酒井若菜/44)、生活訓練施設「リベラ」のスタッフが加わったチームでの治療で、静かながらも展開にグルーブ感が出てきた。もちろん、中村、土屋、酒井、そして、患者側の松浦と土村の演技も素晴らしい。

 X上には、《たった3話で完結かぁ。ストレス社会で特に多い疾患にスポットをあてたのだろうけど、もう少し様々なテーマを見たかったな》などと、続編を望む声も。全3話と短いのもあるが、これだけの良作ならもっと見たいとなるのも当然。続編の可能性はあるのだろうか。

 第1話の冒頭で、弱井のかつての恋人・綿矢陽美(井桁弘恵/27)が回想シーンで登場したが、彼女の事情は不明。また、看護師・ 雨宮(土屋)のバックグラウンドが明らかにされていないが、その様子から見るに、何か問題を抱えていそうだ。これらをあと1話で描くのは時間的に難しそうなので、次シーズンへの伏線なのかもしれない。

 もともと本作はNHKとしても実験的な枠で、前作の伊藤万理華(28)主演『パーセント』はドラマに障害のある俳優を起用するテレビ局、その前の岸井ゆきの(32)主演『お別れホスピタル』は終末期病棟が舞台で、どちらもデリケートなテーマだった。また、各作品の話数もまちまちで、次作の安達祐実(42)主演の『3000万』は全8話となっている。

 これまで続編の事例はないが、そもそも自由度の高い枠なので『Shrink』の続編が作られる可能性は十分にあるだろう。あるいは別枠への移動という可能性もある。

 原作コミックは連載中で、第3話の「パーソナリティ障害」以外にも、まだ描かれていない精神疾患のエピソードが残っている。久しぶりにもっと見たいと思わせてくれるドラマなので、期待して待ちたい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。