■地上波ドラマでは望めない圧倒的なクオリティ
■ネトフリならではの完成度の高さ
『極悪女王』は全話トータルで5時間以上あるが、物語が非常にテンポ良く進み、毎回“引き”のあるラストのため、気づけば通しで一気見してしまった――これは、筆者に限った話ではないだろう。
ネトフリドラマは資金が潤沢で、“ドラマ1話につき製作費が1億円”とも言われている。監督を務める白石氏が『孤狼の血』(2018)など多くのヒット作で賞を獲得してきた一流の人物であることもそうだが、役者だけでなくスタッフ陣も業界トップクラスの人たち。そんな制作陣が、一瞬も飽きさせない作品に仕上げているのだ。
当時のプロレス会場やレスラーのメイク、また空気感を完全に再現した演出、規制が多く予算も限られている地上波では絶対に流せない強烈な映像の数々など、演出面でも見ごたえは抜群。
さらにSNSやリアルイベントでは、80年代のプロレス記事をイメージしたキャスト陣のビジュアルを出したり、9月12日には格闘技の聖地・後楽園ホールを借り切って実際にイベントを開催して話題になったり……視聴者に“観たい”と興味を抱かせる手腕も、地上波とスケールが違うと言えるだろう。
■“極悪”なファイトスタイルを完全再現しているため…
そんな見どころだらけ、絶対に観たほうがいい『極悪女王』なのだが、1つだけ注意点として、映像の刺激があまりに強すぎるという点がある。
“極悪”なダンプ松本のファイトスタイルと、暴力的な表現に蓋をせず描く白石監督の作風が合わさり、プロレスシーンは凄惨極まりないのだ。暴走したダンプが敵味方問わずチェーンで殴ったり、当時は長いケーブルのついていたマイクで首を絞めたり……ここでは書くのをためらうようなシーンもまだある。リング上のレスラーからは血が流れ、まさに臨場感あふれる描写になっているが、小さいお子さんとの視聴は注意が必要だと思われる。
『極悪女王』を視聴した人々からは、
《レスラーの体に仕上げて体張りまくる唐田えりかまじ半端ない》
《唐田えりかさんってすごい俳優さんになるのでは…あの非力な小動物みたいな感じの長与千種、目が離せない》
《ライオネス飛鳥さん役の剛力彩芽さんのジャイアントスイングは圧巻》
《阿鼻叫喚の血まみれファイト。フォーク。流血。ハサミ。流血。パイプ椅子。流血。チェーン。流血。血、血、血、血の大流血、、、こうゆう残虐で凄まじく不謹慎なものが見たかった。ヒールもここまで貫くと芸術だと思った》
といった称賛する声が多く寄せられている。
ハードなシーンが目白押しの『極悪女王』だが、最後はどこか爽やかで“青春の美しさ”のようなものさえ感じられる作品でもある。すでに、もし続編があるならぜひ観たい、という気持ちになっている――。
(文/特撮ライター・トシ)
特撮ライター・トシ
幼少期に『仮面ライダーアギト』を観て複雑なシナリオに「何かとんでもないモノがスタートした!」と衝撃を受ける。その後、歳を重ねても熱量は衰えず『クウガ』から始まる平成仮面ライダーシリーズと現在も歴史が続く令和ライダーはすべて履修し、『スーパー戦隊シリーズ』、平成以降の『ウルトラ』シリーズも制覇済み。『仮面ライダーゴースト』の主人公の決め台詞でもある「俺は俺を信じる!」を座右の銘に仕事に全力全開。