2023年に過去最低となる出生率1.20を記録した日本社会。少子高齢化が進む中で、それとは逆行するかのように需要が高まり、拡大を続けているのは犬や猫、小動物を対象としたペット市場だ。

「23年のペットフードの市場規模は前年度比11.9%増の4754億円。値上げや高価格帯商品の投入などで市場は成長しています」(小売り業界関係者)

 特に目覚ましい伸びを見せているのが、病気のペットの症状に応じて獣医師の診断・指導に基づいて与える「療法食」と呼ばれるペットフードの市場である。

「民間の調査会社によれば、民間の調査会社によれば、療法食の国内市場は23年が前年比12.6%増の509億円と、積極的な新商品発売やリニューアルが進んでいることから高成長が続いています」(前同)

 背景にはどの様な理由があるのか。本サイトは国内で療法食の製造、販売を手掛け、神奈川県・横浜市に本社を置く『ペットライン』マーケティング部の石井洋祐さんに話を聞いた。そもそもペット向けの療法食とは何なのか。

「一般的に知られるペットフードとは総合栄養食と呼ばれる商品です。健康なわんちゃん、ねこちゃんなら、この商品と水を飲んでいれば健康を維持することができます。一方で療法食とはペットの健康状態や症状にあわせて原材料や成分を調整しているご飯で、一般的なペットフードとは別物。体調の悪いわんちゃん、ねこちゃんへ向けた食事。いわば食事療法のためのペットフードなのです」(『ペットライン』マーケティング部・石井さん=以下同)

 健康上の問題を抱えたペットが食べる療法食。その歴史は古く、戦前となる1939年に、慢性腎臓病を患った犬を対象とした療法食が欧米では開発されている。

「ペットの捉え方の違いが、日本と海外での療法食の発売時期に影響しているのかなと思います。日本では番犬や狩猟用として犬は飼育されており、外飼いが基本でした。しかし、欧米では飼い主と生涯をともにする伴侶動物としての概念が当初から確立されていた。ペットを家族と考える欧米で療法食文化が広まったのは必然なのかもしれません」