■解決金支払い済みなのに新証言続々……弁護士の見解は
1月8日発売の『週刊文春』(文藝春秋)では、被害女性のX子さんが証言。また、X子さんが中居から《意に沿わない性的行為受けた》とX子さんの関係者が告白しており、それに加えてX子さんが直属の上司に相談していたこと、その上司が文春の問い合わせに応じるやりとりも掲載されるなど、新証言も続々と出てきている。
中居が9000万円の解決金を支払って示談になったとされるこの件だが、こうした男女関係が伴うトラブルが起こった際に示談に至る経緯、そして中居と被害女性X子さんの双方に守秘義務があるにもかかわらず、多くの話が漏れ、報道に至っている現状についての疑問を、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に聞いた。
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――中居さんと被害女性のような男女の関係が伴う男女間のトラブルの際、解決金の相場があれば教えてください。
「まず前提として、中居氏が報道されているように不同意性交罪に該当する行為を行なったものとして話を進めます。
この場合の解決金の相場をインターネットなどで調べると、おおよそ100万円から500万円の幅の中であると記載されていることが多いでしょう。私も相場と言われるとこの位の数字をあげます。しかし、現実の解決金については、場合によって大きな差があり、支払能力が無く、失うものがあまりない者が加害者の場合では、解決金50万円を得ることにも苦労するでしょう。
逆に中居氏のように、資産が多く、かつ失うものが大変多い者が加害者の場合、通常このような場合は契約書に守秘義務条項が記載されているため、外に漏れることはあまり無いのですが、9000万円という金額であってもおかしくないと思います」(正木弁護士、以下同)
――9000万円というのはかなりの高額だと多くのメディアでも言われていますが、これはなぜこうした額になると思われますでしょうか?
「男女の関係が伴う男女間のトラブルがあった場合、加害者とされる側は不法行為(民法709条)に基づく損害賠償義務を負うことになります。主たる損害として考えられるのは、精神的損害に対する慰謝料となりますが、一般的には多くても数百万円までというのが相場で、9000万円というのは一般からみればかなりの高額であることは間違いありません。
正確な事実関係がわからないため、あくまで推測になりますが、今回は損害賠償義務を負う者が、知名度が高く、社会的に影響力が大きい芸能人であったことや、示談の際には口外禁止条項といってトラブルや示談の内容を第三者に口外しないという条項(守秘義務)を設けるのが通常ですが、この口外禁止条項を相手方である女性に認めさせ、守らせる必要があることなどが考慮され、このような額になったのではないかと考えられます」
――今回のトラブルでは、中居さんサイドの弁護士が守秘義務契約があったことを明かしていますが、情報は漏れ、報道されるに至っています。SNSなどでも「守秘義務契約があるのにおかしい」「被害女性側の契約違反では」といった意見がありますが、今回のケースではそれには当たらないのでしょうか? また、被害女性側にそれを追及するのが難しい理由があれば教えてください。
「一般的に、何かのトラブルが解決する際には、当事者同士で和解書を作成します。例えば今回の件では、中居氏から被害女性に対して9000万円を払ったそうですから、何に対してどのような名目でお金を払うのか、いつまでにどのように払うのかなどをきちんと文書で取り交わす訳です。
この和解書には、事案を問わずに盛り込まれることが多い事項がいくつか存在します。清算条項といって、他に当事者間で問題が残っていないことを確認したり、口外禁止条項(守秘義務条項)と言って、和解内容を他人に話さないことなどを約束するのです。
参考までに、一般的に使われている口外禁止条項(守秘義務条項)を引用しておきます」
「〇及び〇は、本件紛争に至る経緯及び本合意の内容を、正当な理由なく第三者に口外・開示しないことを相互に約束する。」
「事案に応じて文章は変えるので、“正当な理由なく”を入れない場合なども多いですし、口外禁止に違反した場合の違約金の定めを付けることもあります。
お互いに守秘義務があるということであれば、今回も中居氏と被害女性との間で和解書を作成する際に、口外禁止条項(守秘義務条項)が設けられている可能性が高いです。その場合、ご指摘のとおり、本当に被害女性が口外禁止条項を破って和解内容や経緯を第三者に話していたなら問題があります。ただ、往々にして、どこから話が漏れたのかを特定するのは難しいものですから、本当に被害女性がそのような義務違反をしているのかは分かりません。
口外禁止条項(守秘義務条項)がある前提ですが、仮に違約金の定めがあればそれに基づき、なくても和解契約違反を主張して不法行為に基づく損害賠償を請求することが、理屈上は可能です。
しかし、これにはいくつか問題点があります。まず、本件で言うなら、被害女性が口外したということの立証が困難であるということ。
次に、訴訟まで考えると自分から和解内容を公開して請求していく必要があるので口外禁止条項(守秘義務条項)を取り交わした意味がなくなってしまうということです。特に本件では、被害女性の暴露が仮に事実だとしても、ある程度今回の事件が周知された後の話となる可能性が高いため、これを捉えて和解契約違反を主張するのはさらに困難が伴うでしょう」
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国民的タレントに勃発した信じられないような大スキャンダル。次々と出演番組がなくなるなかで、中居は表舞台から去ろうとしている――。
正木絢生(まさき・けんしょう) 弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや借金・離婚・労働問題・相続・交通事故など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。
BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。
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