■主人公は仲里依紗演じる姉・歩の方が良かったか
『おむすび』では1月下旬、仲里依紗(35)演じる結(橋本)の姉・歩をメインにしたスピンオフのような週が2週続いたが、“古着屋でギャル服ファッションショーをやる”などギャルを前面に押し出した内容でもあり、
《こんなに雑に扱うなら、栄養士を題材にしないでほしい。栄養士は主人公がとりあえずついた仕事で、ギャルメインだけにすれば良い》
《我々は何を見せられている…90年代ギャルファッションで尺取るな》
《おむすびコレクションだって。 これ面白いの? 誰がコレ見て楽しい!ってなるんや》
といった不満の声も多かった。
「そこまで“ギャル”に重きを置くなら、管理栄養士を目指す結ではなく、挫折や葛藤の描写もしっかり描かれていた姉の歩を主役に据えたほうがおさまりが良かったのでは、なんてドラマの根幹に関わりそうな意見もちらほら……。
実際、仲さんは演技派で、ビジュアルも自立した強い女性という感じ。俳優としての格も十分で、朝ドラヒロインとして違和感のない役者ですよね。もっとも、仲さん演じる歩が主人公となると、視聴者受けの良くないギャル描写が余計に増えてしまうわけで……それはそれで問題がありそうですが」(前出のテレビ誌編集者)
『おむすび』は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災が、主人公の結ら米田家のトラウマとして深く関わっているが、劇中で特に深掘りされていたのは、どちらかと言えば姉・歩の方だった。歩が阪神・淡路大震災の時期に中学生だったのに対して、結はまだ6歳と幼かったこともあるだろうが、
《「おむすび」は橋本環奈と仲里依紗のW主演というわけではなさそうだけど、キャストロールを見ると主人公の次は(夫の)翔也(佐野勇斗)ではなく、お姉ちゃんなので、実質あゆが主人公Bみたいなものなんじゃないかと思っています》
《おむすびは仲里依紗ちゃんが主演なんです??ってぐらい仲里依紗ちゃんの役の方が震災で傷ついてるしPTSDだし言いたいことが伝わる気がしている》
《震災絡めるなら主人公は結ではなく歩の方がしっくりくるよねって思った…》
といった声も多く寄せられている。
朝ドラ史上ワースト視聴率に向かって進んでいってしまっている『おむすび』。「朝ドラは大好きで見たいんだけど、今回は離脱してしまった」という声も多く聞こえてくるが、結局のところ、『おむすび』は何が悪かったのか――。朝ドラウォッチャーでもあるドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。
「私もやはり、結と歩のダブルヒロインの方がよかったんじゃないかな、と思っています。
最近のところで言うと、管理栄養士の受験の描写は、時系列と結の娘の年齢を考えると、結は何度か試験に落ちているはずです。そういったエピソードが全く描かれていない。つまり、主人公の成長が描かれていないことによる朝ドラ感の薄さがありますよね。
そこにもつながる根本的なところは、スケジュールがタイトな橋本さんを主演にキャスティングしたことなのではと思われます。脚本がそれに大きく妥協してしまい、多くのエピソードが薄くなってしまった。
朝ドラには、ヒロイン不在の週を作らないというルールがあるとも聞きますが、『おむすび』はそれを破った作品とも言えるわけで……今作はかなり超売れっ子の橋本さんに対する忖度が働いた感じがしますね。そのことが、ドラマの質の低下につながってしまったのではないでしょうか」
ダイジェスト感が強い構成、雑に扱われたメインテーマ、主人公は姉・歩の方が良かった感……他にも原因はありそうだが、『おむすび』は“見たい朝ドラ”とはならず、多くの視聴者が離れてしまったことで、視聴率ワーストへ向かっていっている――。
ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。