■鉄道会社が呼びかける「マナー」とは
しかしその後の技術進歩で電波による医療機器への悪影響が出にくいことが確認されたことや、スマホの普及で通話以外の利用シーンも増えたことなどを受け、マナーは“改定”されている。
「関西では2014年7月1日から、関東・甲信越・東北地域では2015年10月1日から、各鉄道会社のアナウンスは『優先席付近では“混雑時”には携帯電話の電源を切る』ことに変更されています。つまり、電源を切るのはあくまでも“混雑時”ということになりました」(前出の全国紙社会部記者)
マナー改定から10年。その後の呼びかけに変更はないのか。JRに話を聞いた。
JR東日本の担当者は、2015年以降の『優先席付近では混雑時には携帯電話の電源をお切りください。それ以外では、マナーモードに設定の上、通話はご遠慮ください』という呼びかけについて、「現在まで変わりはない」としたうえで、“混雑”の目安について、「車内でもさまざまな状況があると思うので、実際に乗られているお客様同士のご判断にはなる」と話す。各々の判断ということであればまた議論が生まれそうだ。
さまざまな人が利用する公共機関におけるマナーの周知徹底の難しさがうかがえるが、東京メトロでは“混雑”についてホームページで「お客様の体同士が触れ合う程度の車内状態」と定義している。
これを元にすれば山口氏の“側に誰も座っていない状態”でのメール操作はOKということになるけれども……。マナーは利用者全員が認識することで初めて意味をなすともいえる。優先席付近でのトラブルに頭を抱えているのは、鉄道会社のほうかもしれない。