■すべてがかみ合っていた『法廷のドラゴン』

 将棋×痛快リーガルドラマ、しかも、主人公はなんでも将棋にたとえて考える挙動不審な人物となると、かなりなキワモノドラマに思えるが、違和感なく見られたのは、将棋とストーリーをうまく絡ませた、戸田山雅司氏による脚本の力が大きい。最終回でも、上白石と白石との関係の変化が、将棋で表現されるシーンは見事だった。

 また、共演陣の力も大きい。奇想天外な竜美の行動を受け入れ見守りつつ、解説役をはたした竜美の母・香澄役の和久井映見(54)と、パラリーガル兼経理・乾役の小林聡美(59)の存在感。さらにポンコツながらも、竜美からのどんなパスでも受ける高杉真宙の柔軟さも、心地いいコンビ感を演出していた。

 そして、なによりも上白石の快演。変人でシリアスでかわいい、振れ幅の大きい役をしっかり演じきった。上白石は過去に「マイナビニュース」のインタビューで主役について、「物語を動かす人ではなくて、 周りの人が物語を動かすのに反応していくのが主役」と語っていたが、それは本作も同様。脚本、共演陣ともに盤石の態勢だったからこそ上白石抜群の演技(=反応)見せることができたのだろう。

『法廷のドラゴン』のように、すべてがうまくかみあったドラマはそうそうない。X上で、《毎回、楽しく安心して見ることができたので、終わるのがさみしい…シーズン2をお待ちしてます!》など、シリーズ化の声が多いのもうなずける良作だった。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。